「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「税金」「租税」の「税」。確定申告の季節にひもといてみたい漢字です。



「税」という字の古い字体を見ると、穀物を表す「のぎへん(禾)」の右側に「兄」と書き、その上に漢数字の「八」を書く「兌(えつ)」という字を添えます。

これは、銀行券・紙幣を実用性のある金貨などに変えること、「兌換」の「兌(ダ)」にも使います。

「兄」という漢字は、神への祈りの言葉を入れた器・サイを頭上に乗せている人の姿を描いたもの。

一族において神に仕える役割を担った「兄」。

そんな兄の祈りに呼応して地上へ降りてきた神の気配を示すのが、漢数字の「八」の形だといわれています。

つまり、この「兌(えつ・ダ)」という文字は、神がかりの状態となってうっとりしている人の様子を表しているのです。

神の訪れを悦ぶあまり、ぬけがらのようになってしまったその姿に、穀物を意味する「のぎへん」を添えた「税」という漢字。

そこから、収穫した米や粟などから抜き出した中身を納める様子を表すようになりました。

税金とは、国王の政治手腕に心酔し、よろこんで差し出すべきものである。

「税」という漢字にこめられたのは、権力者のそんな思惑。

甲骨文字が生まれた古代中国・殷王朝では、重税や刑罰をもって民衆を手中に収める、恐怖政治が行われていました。

漢字には、そんな歴史の爪あとが残っているのです。

ではここで、もう一度「税」という字を感じてみてください。

『国富論』を記した近代経済学の父、アダム・スミスはこんな言葉を残しています。

「どの税も、それを納める人にとっては、(奴隷のしるしではなく)自由のしるしなのである」

スミスの言うとおり、本来税金とは、私たちが自ら選んだ代表者によって、自由で快適な暮らしを実現するために使われる財源のこと。

先進国の中でも、日本の税負担は低い水準にあることがわかっています。

それなのに、国民の税負担感についての調査では、重税であると感じている人が多いという結果が出ているのです。

それはきっと、納めた税金が真に役立てられている実感がもてないから。

たとえ負担が高くても、幸福な暮らしが保証されていれば、納税は義務ではなく、前向きな意思表示となるのです。

政治家の甘い言葉や大風呂敷にうっとりと惑わされることなく、税金の使い道をともに考え、しかと見届けてゆくこともまた、私たちの役目です。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『日本の納税者』(三木義一/著 岩波新書)

3月11日の放送では「伝」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。

<番組概要>

番組名:「感じて、漢字の世界」

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/



----------------------------------------------------

この記事の放送回を『radikoタイムフリー』で聴くことができます(1週間限定)。

(スマートフォンは「radiko」アプリ(無料)が必要です。⇒詳しくはコチラ http://www.tfm.co.jp/timefree_pr/)

■番組聴取は【コチラから http://radiko.jp/share/?sid=FMT&t=20170304072000】(無料)

聴取期限 2017年3月12日 AM 4:59 まで

※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用頂けます。

----------------------------------------------------