「どうしたらできるか」を考え抜く ジャパネットたかた創業者・高田明が本で明かした商売哲学

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■「どうしたらできるか」を考え抜く

「日本一有名な通販会社は?」と聞かれたら、「ジャパネットたかた」の名前を挙げる人は少なくないだろう。

「ジャパネットたかた」の創業者・高田明氏は、2016年1月にTVショッピングのMCを引退。社長業も2015年には後進に譲っている。そんな彼が書いた初の著書が『伝えることから始めよう』(高田明著、東洋経済新報社刊)だ。

本書には、自身の半生と仕事で大切にしてきた思いが豊富なエピソードとともに語られている。そのなかで何度もくり返される一文がある。それは「できないことではなく、できる理由を考える」という彼の信条だ。

多くの人は難題にぶつかると、それを「できない理由」として、前に進むことを諦める。だが、高田氏は常に「どうしたらできるか?」を考え、実行してきたという。

粘り強く「できること」を考えることがどんな成果を生み出すかは、わずか4坪のカメラ販売店を年商1700億円超という現在の「ジャパネットたかた」の販売規模に成長させたのを見れば、一目瞭然だろう。

■大事なのは「伝えること」ではなく「伝わること」

本書では、高田氏の代名詞とも言えるセールストークについても語られている。彼がもっとも大事にしているのは、「伝える」ではなく「伝わる」ように話すことだ。

まず、「面白く伝える」。高田氏は、「この商品を使えば、こんなにラクですよ!」「この商品なら生活がこんなに楽しくなりますよ!」と、お客さんがワクワクするようなトークを展開する。それが面白さになり、お客さんの心を掴むのである。

次に、「わかりやすく伝える」。そのためには、誰でもイメージできる言葉を使うことがポイントだ。たとえば、高田氏は「コンパクトカメラ」でも「名刺くらいのサイズのカメラ」と伝える。これなら大きさのイメージはグッと具体的になる。

ちなみに、あの独特の甲高い声は、出そうと思っているのではなく、伝わるようにと考えていった結果、自然と出てきたものらしい。しかし、それが確固たるキャラクターとして周知される要因のひとつでもあったようだ。

「伝えたつもり」になりがちなセールストークが、どうすれば「伝わる」のか。彼が培ったマインドとテクニックの結晶は、多くの人に役立つはずだ。

■時代に左右されない「ビジネスで大切なこと」

移り変わりの激しい現代において、ビジネスで求められるものは、「合理的なシステム」「高度な戦略」「卓越したテクニック」だろう。

だが、高田氏が貫いてきたのは「手間を惜しまない」「お客様第一」「愚直に積み重ねる」という、じつに泥臭い昭和の商売人の姿勢だ。

そのひたむきな姿勢こそが、時代を問わずビジネスで成功する秘訣なのではないだろうか。本書からは、そんな当たり前だが一番難しい「仕事において大切なこと」が伝わってくる。

(ライター:大村佑介)

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