埋まらない人間関係の溝を諦めてはいけない 命懸けで愛することが人を変える

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あなたは、普段から周囲の人たちを愛しているだろうか?
もしかしたら、愛するとか愛さないとか、あまり考えたことが無いかもしれない。

この本では、人を愛すること=人をほめること と定義づけている

自分の子どもに、パートナーに、後輩に、部下に、友達に。ほめることは大切だが、その一方でほめることに難しさを感じる人もいるだろう。また、ほめても相手に響かなかったという経験がある人も多いはずだ。

そんな人はこの本に目を通してみてほしい。

自身がほめられて育ち、その大切さを知ったことから、一般財団法人ほめ育財団を立ち上げ、ほめて育てる教育=「ほめ育」を世界196ヶ国に広げる活動を行っている原邦雄さんが上梓した『たった一言で人生が変わる ほめ言葉の魔法』(アスコム刊)だ。

たくさんの人に勇気を与えているという本書について原にお話を伺った。そのインタビュー前編では、「ほめる」ことの本当の意味について聞いていく。

■これはただの「ほめ本」ではない! 本当に深い絆を生む「ほめ言葉の魔法」

――まず、これまで職場の関係性を良くする本を書いてきた原さんが一気に舵を切り、本書で幅広い層に「ほめる」ことの本当の意味を伝えようとしていることに驚きました。

原:人の悩みのほとんどは人間関係だと思うんです。実際に私のもとにはあの人との関係を良くしたい、あの人の良さを伝えたいけれど、どのようにほめればいいのか分からない。何から始めたらいいのか分からない。そういう声がすごく来るんです。

そして、その悩みから、もう相手とは分かり合えないと諦めてしまっている人たちがたくさんいます。私はそういう人たちに諦めないでほしいんですよね。

――本書には親子や家族の人間関係も含めて「もう元の関係を取り戻すのは無理だろう」と思うような溝が埋まってしまった事例がたくさん掲載されています。再婚相手の連れ子の女の子と仲良くなるために、男性が必死にその女の子の好きなアニメやゲームを覚えて詳しくなる事例なんかは愛情の深さがうかがえます。

原:そうなんですよ。テクニックではなく、いかに愛情を注ぐかということなんですよね。私は「ほめ育」という教育方法を世界に広げるために活動をしているのですが、その中で強く感じるのは、「ほめる」ということを一つのテクニックだと捉えている人が多いということです。

「ほめる」はテクニックじゃないんですよ。その人のあり方、存在を認めるということが私の考える「ほめる」なんです。愛情なのです。人を愛すること=人をほめること なのです。

――存在を認めることが、「ほめる」のスタートになるわけですね。

原:スタートです。テクニックでほめたとしても、相手にはすぐにそれが伝わりますからね。

――お世辞だと分かりますよね。「本音ではないな」と。

原:「アメとムチ」で今はアメをくれているんだな、とか、多分お願い事があって急にほめだしたんだな、とか。浅はかな「ほめる」というのはすぐにばれるんです。

先ほどおっしゃった連れ子の女の子の事例は、彼女が中学2年生とすごく多感な年頃なんです。最初はまったく相手にされずに、もう仲良くなることを諦めるしかないというくらいの溝でしたが、2年間必死に愛情を伝え続けて振り向いてもらえた。

お父さんはあなたのことを愛していますよ、というメッセージをずっと送り続けた。本当に大切にしたいからこそ、娘の好きなものを自分も好きになったんです。これはテクニックじゃないんですよ。2年間振り向いてくれない相手に愛情を伝え続けるってものすごい根気が必要じゃないですか。

――普通なら途中で心が折れてしまいますよね。

原:そうでしょ? 途中で言うこと聞けよ!と思ってしまう。諦めちゃうんですよね。

――ただ、こうして熱く語っていただいていても、今、世に出ているたくさんの「ほめ本」と一見同じように見えます。本書のどういう部分が他の「ほめ本」と異なるのでしょうか。

原:この『ほめ言葉の魔法』はテクニック本ではなく、あり方を教える本です。相手が喜ぶだけではなく、ほめた側にも成長を促します。

実感されたことがある人もいるかもしれませんが、相手をほめるのは難しいんですよ。良いところを見つけて、的確に言葉をかけないといけません。そこまでいくのには根気がいりますし、諦める選択肢も途中で出てくるでしょう。

そういったことを乗り越えて良い関係になる。この理想的な関係に行きつくのが、私の考える「ほめる」ことの目的なんです。うわべの関係ではなく、お互い言いたいことを言ってぶつかりながら、本質を知っていく。テクニックだけではそこまでの関係はならないですよね。

――本書の中で「叱る」ことも「ほめる」ことの一つだと書かれています。最初は意外に思えましたが、自分の体験と重ねると素直に理解できました。

原:そうなんですよ。人には伝えにくいけれど、伝えないといけないこともたくさんありますよね。相手のためになることならば、愛情を持ってしっかりと伝えてあげる。これが大切になんですね。

――本の中に、とある回転寿司チェーンの職人気質な店長の振る舞いに対して、原さんが共感し、その上で「叱りきる」ことで相手の行動を変えたという事例が登場します。このとき、原さんは相当な覚悟を持って叱ったのではないですか?

原:覚悟を持って言いましたし、叱るときだけではなく、ほめるときも同じです。ほめる覚悟が必要なんです。相手の良いところを言うということは、相手のことを分かっていないといけないし、相手のことを考えて言わないといけないわけですから。

――そこまで相手のことを考えないと、相手には伝わらないということを忘れてしまっている人も多いように思います。

原:日本人は、ほめた経験も、ほめられた経験も少ないように思います。そうなると、本当にほめられたときに、自分の感情がどう動くのか分からないんですよ。体験したことないから。だから、「ほめられても泣くことはないでしょう」と言い張る60歳くらいの経営者の方が号泣してしまうんです。

――それこそが「ほめ言葉の魔法」じゃないですか?

原:みんな、しがらみや与えられた役割の中で生きていますからね。

本当の「ほめる」は、そうしたしがらみも取っ払い、本気で相手の良いところを探すことです。言い合いになることもあるかもしれません。でも、分かり合えたときに笑い話になるでしょう。それが、私が「ほめ育」で目指している関係性なんですよね。

後編【「人はほめられるために生まれてきた」 “ほめる教育”の重要性を聞く】

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