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●"究極の学割"その内容とは?
スマートフォンの新商品よりもサービスが主役となった大手携帯電話会社の新製品発表会。KDDIが11日に開催した発表会も主役は"学割"だった。学割を基点に様々な割引きを適用することで月額2,980から利用できるプランを提供する。もはやMVNOの領域に入るような料金帯だが、KDDIはMVNOへの対抗を狙っているのだろうか。

○「学割天国 U18」をつくった意図

KDDIが発表した学割サービス「auの学割天国」。18歳以下を対象にした「学割天国 U18」と25歳以下を対象にした「学割天国 U25」の2種類がある。注目したいのは、様々な割引きを利かせることでMVNO並みの月額料金にできる「学割天国 U18」だ。

「学割天国 U18」は、1回5分以内の国内通話が無料となる「スーパーカケホ」とデータ利用量に応じて通信料金が決まる料金プラン「U18 データ定額 20」をセットにしたもので、複数の条件を満たすと、最安で月額2,980円から利用できるのが最大の特徴だ(この条件がかなり多岐にわたっているのだが、それについては後述する)。

KDDIでは昨年、学割サービスにおいて、5GBを付与するキャンペーンを展開したが、対象者の通信利用実績を見ると、3GBまでが全体の23.5%、10GB以上が同25.3%と、データ通信を多用する人、そうでない人に分かれた。また、同一人物であっても、データ通信の利用は夏季休暇とそうでない場合などで、月ごとに大きく変化することがあるとし、データ利用量に応じた料金プランを採用したという。

さらには、KDDIならではのサービスも付けて提供する。修理代金のサポート、データ復旧サポート、Wi-Fiセキュリティ、auエブリデイの4サービスをセットにした「auスマートパスプレミアム」ほか、音楽配信サービス「うたパス」も同様に年内の月額料を割り引く。MVNOでは販売していないiPhoneにも対応しており、iPhone 7を手軽に利用できることも魅力としてアピールする。

こうした施策についてKDDIの田中孝司社長は「月額2,980円、3GBであれば、MVNOが出している料金レンジに入ってくる。我々はそこまでリーチしたいと思っている。iPhone 7にも対応、様々なサービスもついている。auがどこまでできるのか、チャンレンジする1つの検討結果として受け取っていただきたい」と話す。つまり、料金とサービスのあわせワザで、MVNOに見劣りしないサービスを出したことになるわけだ。

●注目すべきは料金設定
○MVNOへの対抗策か

こうなると「今後もKDDIはMVNO対抗策を出すかもしれない」という考えが浮かぶ。しかし、KDDIの関連会社にはUQコミュニケーションズがあり、そこではMVNOの料金帯に近い割安な通信サービスとして「UQ mobile」を展開している。UQ mobileとの棲み分けはどうなるのかも気になるところだ。

これらに関して田中社長は「MVNOの領域に片足だけ入ったに過ぎない。MNOとして何ができるのかを学割を通じて究極のところまで踏み込んだだけ。当然、MVNOとガチンコで勝負することは考えていない。全体としてプラスになればいい」とコメントしている。現段階ではMVNOの対抗策ではなく、UQ mobileの領域にも、両足で踏み込むことはないというわけだ。

今回のニュースを巡ってはMVNOを強く意識したと報じるところもあるが、上記の田中社長のコメントどおり、その狙いは薄いと見られる。仮に意図があったとしても、手探り程度のものだろう。そもそも、昨年12月にビッグローブの買収も発表しており、KDDIはグループとして格安通信のMVNO(ビッグローブ)、KDDIのセカンドブランド的位置づけ(UQ mobile)というアセットがあり、それを崩すようなことは現実的には考えにくいからだ。

○見せ方が際立つ

むしろ今回のニュースで注目すべきは、"月額2,980円から"という見せ方のうまさだ。先にも述べたとおり、複数の条件をクリアしなければこの料金にはならない。

「学割天国 U18」では18歳以下の人が新規契約を行うことで適用される。この段階で3GBまでなら月額5,390円となる。学割を適用せずに同様の条件(データ3GB利用時)だと 月額6,200円となり、多少のお得感は感じられるが、月額2,980円には程遠い。

実はあと2つほどハードルをクリアしなければ、月額2,980円にはならない。ひとつが家族の新規加入だ。これにより月額1,000円割引きが適用される。そして、固定通信の割引サービス「auスマートバリュー」を適用することでさらに月額1,410円が割り引かれ、月額2,980円からという料金が実現するのだ。

月額2,980円の学割ユーザーが増えると、足元は学割対象者からの収益は減るかもしれないが長期的に見てプラスに傾く。実質ゼロ円スマホの販売が禁じ手となって以降、新規加入者獲得の決定的な策がないのがKDDIの現状であり、固定通信の契約にいたれば、さらにユーザーの長期的な囲い込みにも成功するだろう。

今回の学割が機能すれば、KDDIにとっても収益面でプラスになる"究極の学割"になりえるが、ハードルの高さも目立つ。果たして効果のほどはどうだろうか。

(大澤昌弘)