記者は男なのですが、女性から「世の娯楽はほとんどが男向け」という言葉を聞いて驚きでした。正直言って自覚してなかったし、女性の目線からだとそうなのか……と。

ところで、“娯楽”って何を指すんだろう? ちなみに記者は、音楽鑑賞が趣味なのですが。

「興味はあるんだけど、お店に入りづらい」という女性は多い


ディスクユニオンは、池袋店内に女性向けミュージック・セレクト・ショップ「Girlside」をSHOP IN SHOPとして10月21日よりオープンしています。


「レコード、そして音楽が、より女の子の身近なものであって欲しい」をコンセプトに、レコードやCD、DVDだけでなく、雑貨やアクセサリー等のファッションアイテムまで販売するという同店。プロデュースは、DJ、ライター、ショップオーナーとして活躍する多屋澄礼さんが務めています。

とにかく、音楽が“女の子目線”仕様になっているということに惹かれました。それって、どういう定義で、どういう内容なのか? 実際にお店へ行き、詳細を伺ってきました!



まず始めにお聞きしたいのは、このような“女の子目線のミュージック・セレクト・ショップ”をオープンしたきっかけです。
「ディスクユニオンのお客様は特に男性層のお客様が多いので、女性にも楽しんでもらえればと思いました。レコードを触ったことがないという若い女性も多いですし、『興味はあって聴いてみたいんだけど、お店に入りづらいな……』という方もいらっしゃいます」(スタッフさん)
あぁ、女性側にはそういう心理があるんですか!
「ありますね。タワーレコードさんやHMVさんは女性がCDを買うことも多いと思うんですが、特にウチは女性層のお客様が少ないので(苦笑)。音楽が身近なものであって欲しいという意味での出店です」(スタッフさん)

“女の子目線”のCDとして、どんな作品を扱っている?


続いては、一番聞きたかった質問です。“女の子目線のCD”って、どういう定義なんでしょうか?
「置いている品物としては、80年代のギターポップとかネオアコとかが多いです」(スタッフさん)


「女性って男性と違う感性があると思うので、そういう琴線に響くもの。音の広がりが感じられるような作品です。色んな音楽がありますが、いつ聴いても気持ちが盛り上がったり、明るい気分になれたり、作業している時に聴いても違和感がなかったり。爽やかでポップなものが多いですね」(スタッフさん)


同店は、多屋澄礼さんがリーダーを務める女性DJユニット「Twee Grrrls Club」のメンバーがプレイする作品をメインに揃えています。彼女たちは「女性に聴いてもらいたい」という曲を意識して選んでいるユニットです。

そんな「Girlside」が特に推しているアーティストとは……? それは、maika-loubte(マイカ・ルブテ)さんです。
「作曲、アレンジ、演奏をすべてご自分で担当している、フランスと日本のハーフの方です。歌詞も日本語と英語とフランス語を混ぜていらっしゃいます」(スタッフさん)



なにげに“音楽好き”がアピールできる雑貨、アクセサリー


「Girlside」では、Tシャツ、雑貨、アクセサリー類も豊富に販売している模様。“音楽好き”をアピールでき、それでいて女性が着やすいようデザインになっています。
「最近は大きめサイズが流行っているので、サイズはS〜XLまで揃えています。男性でも全然着れますよ!」(スタッフさん)
グッズ類のデザイナーは、音楽関連の人が多いよう。パンクバンド「the Gimmies」のメンバーであり画家でもある水沢そらさんだったり、ディスクユニオンに勤務する人気インスタグラマーのカキハタマユさんらがTシャツのデザインを担当しています。



「音楽×女の子というイメージをロゴにしていただきました」(スタッフさん)

他にも、様々なオリジナル商品が販売されています。


これは、レコードプレイヤーの下に敷くマット。敷くだけで、見た目がおしゃれな感じになります。インテリアとしても映えそう!


このトートバッグは、レコードがちょうど一枚入るサイズになってます。


7インチがデザインされたポーチは、ジャケから外した裸の7インチがすっぽり入ります。


キーチェーンは、7インチ・12インチのデザインに。


キャップは「A side」「B side」というデザイン。要するに、なにげに音楽が引っかかってます。ほのかに入ってる感じが、おしゃれ!

「彼氏に連れてこられて、退屈そうにしてる女性が多かったんです」


実際に「Girlside」店内を見回すと、決してゴリゴリのフェミニン寄りではないという印象を受けました。



スタッフ そうですね。男女で一緒に楽しんでいただきたいです。よく、男性が女性をCD店に連れてきて、女性の方が「あんまり興味ないんだよなぁ……」と退屈そうにしているのはよく見かける光景だったんです。でも、今後は一緒に楽しんだり、女性が「ディスクユニオン行こうよ、Girlsideもあるから」という感じでお越しいただけると、我々としては一番うれしいです。
――そういえば、自分も思い出しましたよ。昔、レコードを探してる時にツレの子が退屈そうにしてたことがありました(苦笑)。
スタッフ 例えば、女性がバーゲン行く時に男性が退屈そうにしているという逆パターンもあると思います(苦笑)。レコード屋はその逆パターンで、男性の方がすごい楽しんでるけど女性は「退屈だな……」という光景をしょっちゅう見かけるんです。それを払拭して、女性も楽しんでいただきたいですね。一緒に楽しむ方が、絶対2倍、3倍、4倍くらい楽しいですし。女の子が退屈そうだと、お互いに疲れちゃいますよね(苦笑)。

音楽の楽しみ方に性差はない


ところで、女性と男性では音楽への接し方・楽しみ方に違いはあるのでしょうか?
スタッフ 私は、基本的にないと思います。一般的に男性には収集癖があると言われますけど、女性でも実はコレクターさんがいらっしゃいますし。
――そうですよね。特にライブハウスとかで男女が会話してるのを聞くと、全く違いは感じないです。
スタッフ ライブやフェスとかで、女性でもダイブをする方がいるじゃないですか(笑)。だから、ライトユーザーの方とコアな方かの違いですよね。そこから突き詰めるかどうかはその人次第なので、あんまりそこで男性女性というのは感じたことがないんですよね。そういうのも全て含めて「本当は聴きたくて興味あるのに……」と引っ込んでる女性たちを引っ張ってあげたいです。
――なるほど。性差があるというより、女性だからなかなか踏み込みにくい状況があるわけですね。ということは、「Girlside」はゴリゴリに“女性限定!”という感じでもなさそうですね。
スタッフ はい。「女性が入りやすくなった」という雰囲気で、一歩を踏み出すきっかけにしていただきたいと思っています。

実際、「Girlside」は男女ともに何気なくサラッと入れる雰囲気です。


「お客様には女子高生の方もいらっしゃいますし、ご年配の方、男性もいらっしゃいます。7インチボックスも販売しているので、それを使われるんだと思います」(スタッフさん)

今後は、CD店に入りづらさを感じていた女性たちに向けた“初心者向けDJ講座”などワークショップの開催も予定しているという同店。
音楽の楽しみ方に性差はないですが、「知りたいけど二の足を踏んでいた」という女性のハードルを低くする役割を担いそうです。
(寺西ジャジューカ)