新明解国語辞典など、多くの辞書を出版している三省堂。辞書を編む専門家が選んだ「今年の新語2016」発表会が12月3日に行われた。



三省堂の「今年の新語」とは、すぐ忘れられる流行語ではなく今後の辞書に掲載されてもおかしくないもの。今年とくに広まったな、と感じられる言葉だ。そのため、今年誕生したかどうかは問わない。実は昔からあったが、あまり使われていなかった言葉が徐々に広まり、日常的に使われるようになるという現象に注目している。

応募総数2834語の中から、辞書を編む専門家が選んだベスト10を発表。選ばれた言葉には 「国語辞典風味」の語釈をつけて紹介された。



2016年はどんな言葉が登場?



まずは、選ばれた新語を見てみよう。
10位 パリピ
9位 エゴサ
8位 食レポ
7位 VR
6位 スカーチョ
5位 ヘイト
4位 レガシー
3位 ゲスい
2位 エモい
大賞 ほぼほぼ

発表会では特別ゲストに伊集院光さんを招き、選考委員(小野正弘さん、飯間浩明さん、瀧本多加志さん)とのトークセッションが行われた。



さっそく、10位の「パリピ」で会場から笑いが起こった。実は2014年にも「パーティーピーポー」という言葉があった。そこから英語の発音を意識した「パーリーピーポー」になり、さらに省略された「パリピ」になる。この過程で意味も変化して、ただ集まって盛り上がることを好む人たちを指すようになっている。

「もともと感覚的にできた言葉だから、理由なんかないのでは?」と語る伊集院さん。意味がないながらも、納得できる語釈を作った先生方に敬意を示していた。

大賞となった「ほぼほぼ」に対して、流行語を並べるだけではない「今年の新語」に意味があるのはココだ、と伊集院さん。「ほぼほぼを最近の言葉だとして使っている人は、ほぼほぼいないんじゃないか(笑)」

選外には「神ってる」「チャレンジ」「IoT」の3本が挙げられた。



「神ってる」が選ばれなかったのは、別の賞で大賞になったためと思いきや、そうではないらしい。飯間さんによると、現時点では広島カープ・緒方監督の顔が思い浮かぶ“流行語”の意味合いが強く、定着しつつある言葉とは少し性格が違うのでは? と考え、選外にしたとのこと。

大賞「ほぼほぼ」の語釈を紹介しよう。

“「ほぼ」よりも話者自身の観点や期待がこもるぶん、話しているほうでは度合いを高めているつもりでも、受けとるほうからは不安に思われる場合もある”

本来なら繰り返しで意味が強まるはずだが、受け取り手からするとあいまいさを増すことも。伊集院さんもそれが言葉の不思議なところだ、と絶賛していた。飯間さんはこの言葉を大賞とした理由について、テレビ番組や本のタイトルでも使われて、注目され始めたのが今年であり、「ほぼほぼの元年」ではないかと解説した。



ツイッターが言葉を変えている?



最後に、会場から質問コーナー。

質問:ツイッターなどツールによって言葉は変化していくんでしょうか? それに辞書はどう対応する?

小野さんは、コンピューターを「コンピュータ」としていた理由を説明。むかしまだ通信料金が高かった時代に、あえて一文字を削っていたそうだ。

伊集院さんは、女子高生が会話でしか使われない言葉をテキスト化することで少し変わったのでは? と語った。「『わろた』とか『〜じゃね?』とか、インターネット環境やツイッター文化が口語自体も変えていくっていうのはあって、それに辞書がどう対応するかという問題はありますよね」



イベント終了後、選考委員に感想を聞いてみた。

小野さん「観客のみなさんの反応がとても良くて、嬉しかったですね」
飯間さん「盛り上がって、ホッとしました。個人的には『ユーキャン 新語・流行語大賞』に並ぶような年末恒例のイベントにしたいと思っています。性格が違うので、すみ分けはできると思いますよ」と今後に期待をよせた。



発表後、Twitter上の反応を見ると「流行語大賞よりもしっくりくる」「ほぼほぼ納得」「フラットに選んでる様子が面白い」などおおむね高評価だったようだ。

今回選ばれた新語の詳しい語釈や選評は、公式サイトでどうぞ。



(村中貴士/イベニア)