布団に入った後、なぜか足の先だけがとても冷たくて眠れないことがある。このとき体はどういう状態なのか、そしてなぜ足だけが冷えるのか、その対処法を睡眠の専門家に聞いてみた。

なぜ足の先がとくに冷たくなるのか


今回、話を聞いたのは、快眠プランナーの塚島早紀子さん。まずは、冬の寒い時期に、人の皮膚の表面が冷たくなる理由を教えてもらった。

「人は、気温が変化しても血液量を調整し、汗を出すことで体温を一定に保っています。特に寒い冬は体温を一定に保つために、血管を縮めて血液の量を制限することで、皮膚の温度を下げて体内の熱を外に出しにくくします。そのため、皮膚の表面が冷たいと感じやすくなります。また、不規則な生活が続くと自律神経が乱れ、脳から体温調整の命令がうまく届かないことも、体が冷えたままになる原因の一つです」

では、皮膚の表面の中でも、とくに足先が冷たくなるのはどうしてなのだろうか。

「足先は、心臓から遠いため、血液が流れにくい場所だからです。身体の中で熱が作られても、熱を循環させてくれる血液の流れが悪いとうまく運ばれていきません。血液は、心臓や内臓など生命の維持のために重要な場所から熱を運ぶのも足先がとくに冷えを感じやすい原因の一つです。また、常に足先が冷えている場合は、体温調整がうまくいっておらず、身体の中で熱を作りにくくなっていることも考えられます」

足先はもともと熱が運ばれにくいため、冷えやすい部位というわけだ。それに加えて、自律神経の乱れなどの要因が重なれば、足先の冷えは深刻になるようだ。

足先が冷たいとなぜ眠れないのか



冬場は特に、布団に入っても、足先がひんやりしていて、なんだか心地が悪くて眠れなくなることがある。足先が冷たいとなぜ眠りにくくなるのだろうか。

「人が眠るときには、脳の温度を下げる必要があります。そして脳の温度を下げるには、身体の芯の温度『深部体温』を下げる必要があります。深部体温を下げるには、体から熱を放出させなければなりません。
しかし、足先が冷たいときというのは、皮膚の表面が冷えていると考えられるため、身体の芯から熱がくみだされても、指先にまで運ばれず、身体の外に放出されにくくなっています。
結果的に、深部体温が下がらず、脳の温度も下がらないため、眠気を感じず、寝つきが悪くなるのです」

脳の温度を下げ、眠気を起こすためには、寝るときの体温調整が重要であるようだ。

「足先が冷たくて眠れない」状況を避けるには入浴法がカギに!



布団に入った後、自然と心地よい眠気を起こすために欠かせない体温調整。実は、寝るときに足先が冷えてしまっているのには、寝る前の入浴の仕方にも原因があると塚島さん。足先が冷たくて眠れない状況を避けるための入浴法を教えてくれた。

●ぬるめの湯に浸かり、足先の血液循環を促す
「毎晩のお風呂の入り方を見直せば、足先の血液の循環を促し、足先の冷えを防ぐことができます。普段、熱めのお湯に浸かっていませんか? 大切なのは、38℃〜40℃くらいのぬるめのお風呂に浸かることです。実は、ぬるめの温度が最も血流を促し、心と身体をリラックスさせる自律神経『副交感神経』を優位に保つといわれているのです。肩までしっかり、額からじんわり汗が出る程度の15分くらいを目安に浸かりましょう」

●入浴は寝る1時間〜1時間半前に行う
「ある調査では、就寝1時間〜1時間半前に入浴することで、0.5℃〜1.0℃ほど体温が上昇し、中途覚醒が減少して寝つきがよくなり、深い睡眠が得られたことが分かっています。寝る直前に入る人も多いかもしれませんが、少し余裕を持って入りましょう」

●入浴剤には「硫酸ナトリウム」が主成分の粉タイプを
「入浴剤は、硫酸ナトリウムが主成分の粉タイプのものを選ぶと、身体を温める保温効果が期待できます」

また、足がとくに冷えやすい場合、次のような方法もおすすめだという。

「足の先が冷えやすい方は、入浴前に暖房、加湿器、ゆたんぽ、布団乾燥機などを使って、寝具を適温に温めておくといいですね。掛布団と敷布団で囲まれた小さな空間を『寝床内環境』といいます。睡眠の質を高めて快適に眠れる寝床内環境の温度と湿度は、“温度33℃、湿度50%”といわれています。目安にしてみましょう」

これらの入浴対策と寝具の温めなどを行って、そもそも「足先が冷たくて眠れない」という状況に陥らないようにするのがコツだ。足先の冷えが気になり寝つきが悪い人は、ぜひこの冬、実践してみよう。
(石原亜香利)

取材協力


塚島 早紀子さん
快眠プランナー、上級睡眠健康指導士。楽しい睡眠をテーマにした「pleasantsleep.jp」を開設。執筆、講演、メディア出演などを通じで楽しく取り入れられる快眠レシピを発信中。