将棋には、将棋を指さずに観る専門の「観る将」や、棋士・女流棋士らを撮影しネット上でアップする「撮る将」など様々なタイプの将棋ファンが存在する。最近では棋士達のたべる「おやつ」など『食』の側面から将棋を楽しむファンも増えている。『将棋めし』なる漫画も出ており、ファンの間では人気だ。

今回は11月3日に行われたイベント「侍"(ざむらい) -秋の陣-」に参加。このイベントは、元々このお店に常連としてよく来ていたプロ棋士達が開催しており、プロ棋士の対局を間近で観ることが出来る。今回、対局の合間に阿久津主税八段、戸辺誠七段、中村太地六段、船江恒平五段、田中悠一五段、佐藤慎一五段、藤田女流二段ら総勢7名のプロ棋士達が、対局前日や当日などに食べる「勝負メシ」についてのインタビューに快く応じてくれた。
「勝負メシ」に関しての回答結果は以下の通り。意外にも「肉」系の料理が勝負メシとして最多となった。

それぞれ以下で「勝負メシ」の詳細を聞いていく。

「対局前日には肉を」 阿久津八段


まずは阿久津八段。お好み焼き屋でお客さんが真横に座っている状況での対局について、自身にとってもかなりレアだったというが「見られることでモチベーションに繋がった」という阿久津八段にいくつか質問をした。


――これだけ間近でファンに見られる対局は初めてですか?
「殆ど無いと思う。間近で将棋を見てもらえるとより好きになってくれるはず。ファンが増えて欲しいなーと」
――大事なタイトル戦や対局の前に良く食べる「勝負メシ」はありますか?
「対局前日は肉を食べる。ステーキ、ハンバーグ、焼肉など。もしくは侍"に来ることも」

――前日にお酒を飲むことはありますか?
「将棋指しは普段飲みたい時に飲めるので(笑)。前日にはお酒は飲まない」

――(ご自身の)対局が行われている際によく食べる「おやつ」はありますか?
「毎回ではないが、どら焼きが好きなので買っていくことが多い。近所のお店で美味しいところがあるので」


――好きなお好み焼きメニューはありますか?
「ミックスとか豚玉とかオーソドックスなものが好きです(笑) お酒を飲むときは、だだちゃ豆・鶏レバーがオススメ」

「勝負事は“将棋”のみ」 戸辺七段


続いて戸辺七段のインタビュー。阿久津八段と同じく「勝負メシは肉」との回答だった戸部七段に詳しく話を聞く。

――このような場所での対局は緊張しますか?
「逆に燃えるものがある。とにかく応援とかは多いほうが良い。プレッシャーにはならないので」



――大事なタイトル戦や対局の前に良く食べる「勝負メシ」はありますか?
「お肉が大好き。対局前日によく食べる。次の日の対局に備えて、エネルギーになるイメージ」

――前日のご飯や、対局当日のご飯などに何かルールはありますか?
「特に決めないようにしている。その時に体が欲している物を食べるように、自然に任せている」

――このお店にはよく来られますか?
「将棋の研究会や仕事が終わった後に、阿久津さん・佐藤(慎一)さんなどと良く来る」

――将棋以外にもゲームはやりますか?
「麻雀やバックギャモン等好きな方もいる。自分は勝負事は“将棋のみ”と決めている。これがポリシー」



「カレー・パスタ・生姜焼き」 中村六段


続いて中村六段。「カレー・パスタ・生姜焼き」が勝負メシの中村六段に詳細を聞いた。


――これだけ間近で見られながら指す将棋は普段と何が違いますか?
「相当レアな場面だが、こんな機会はそうないので精一杯良い将棋を指したい。本当に距離が近いです(笑)」

――ここぞという時の「勝負メシ」はありますか?
「対局中はチョコレートを食べて集中力を高める。昼はイタリアンでカレーかパスタ、夜は豚生姜焼き定食などの定食ものを食べることが多い。カレーは頭が働くと言われているので」

――普段将棋以外で趣味などはありますか?
「フットサルをよくやりますね。あとランニング。ランニング終了後にこのお店(侍")にという流れが多い」

――棋士がこんなに集まるお店は他にあるか?
「他にこんなお店はないですね。これだけ棋士の方が来るお店も珍しいので、将棋界では有名になりつつあります。来れば棋士に出会えるかも」

――「こんな場所で対局してみたい」と考えることはありますか?
「屋外で将棋をやってみたい、サッカースタジアムみたいな場所でスポーツ感覚で観て欲しい。日本の伝統文化なので、厳かな雰囲気
の中でやることが多いが、たまには応援団なんかいてわーっとやるのも良いかな(笑)。“今日は応援OK”みたいな日もあって良い」

対局当日の朝は「白いご飯」 船江五段


続いて船江五段のインタビュー。勝負メシは「白いご飯」、その潔さが印象の船江五段に話を伺った。


――お好み焼き屋という場所での対局はどう感じる?
「最初はちょっと違和感があったが、将棋が始まると集中して指すことが出来た(インタビュー時点で一局目終了)」

――これだけ近くでファンが見ていることについてはどう思う?
「自分にとってはプラス。ファンが見ている以上敗けたくないという気持ちがより一層強まる。」

――対局前日等に食べる勝負メシは?
「普段の朝ごはんはパンしか食べないが、対局の日だけは“白いご飯”を食べるようにしている。奨励会の頃からやっているので、習慣としては十数年続いている」

――対局してみたい理想の場所は?
「お寺で対局をしてみたい。観客としてお寺で行われた対局を観に行ったが、将棋の雰囲気とマッチしていてものすごく良かった。寺のような厳格な場所で対局してみたい」

「侍"(ざむらい)のお好み焼きが勝負メシ」 田中五段


続いて田中五段。「侍"のお好み焼き」が勝負メシだと語る田中五段に詳細を聞いた。

――これだけの距離でファンから見られると緊張する?
「将棋が始まると関係ない。ファンの方も遠慮しているようだが、もっと近くで見てもらっても大丈夫」


――対局前日などここぞという場面での勝負メシは?
「対局前日は良くこのお店に来てお好み焼きを食べている。前日はアルコールを飲まないが、普段来るときは良く飲んでいる」

――このお店にに棋士の方が多く集まるのはなぜ?
田中五段「千駄ヶ谷に将棋会館があるので、総武線沿線、中野・高円寺・阿佐ヶ谷あたりには棋士が多いからだと思う」

――「おやつタイム」には何を食べる?
「たまにチョコレートか飴を食べる程度。ブドウ糖を食べることもある」

――普段将棋以外での趣味は?
「特に変わったことはしてない。最近は“ポケモンGO”をやっている」

――将棋会でポケモンGOは流行っている?
「棋士でもやっている人は少ない。ポケモンGOのお陰で前より歩くようになった」

――現在レベルはどのくらい?
「レベルは27くらい。リリース一週間後くらいに始めた。やっと捕獲数120匹を越えた段階」

――普段どのような場面でポケモンGOをやる?
「家から駅まで歩くときは起動して距離がカウントされるようにしている」


――最近ポケモンGOでゲットして嬉しかったポケモンは?
「カメックスまでやっと進化させられたこと」

「おやつは基本的にフリスクのみ」 佐藤五段


続いて佐藤五段。勝負メシは「納豆もしくは肉」、そんな佐藤五段にも話を伺った。


――これだけ近くでファンに観られると緊張する?
「やる前々ではどういう心境になるかわからなかったが、皆さんのマナーもとても良く普段と変わらなかった」

――対局前に食べる勝負メシはある?
「納豆もしくは肉。納豆は朝ごはんとして食べていて、奨励会時代から続いている」

――対局してみたい理想のシチュエーションは?
「普段はあまり考えたことがない。巌流島に盤を持っていき、友人と対局したことはあります(笑)」

――対局中に良く食べるおやつはある?
「基本的に食べるのはフリスクだけ。科学的にはチョコレートとかが良いとは思うが、そういうのはあんまり良しとしないというか(笑)。“空腹でも歯を噛み締めて指す”くらいの気持ちでいる。ただ自分が無頓着なだけというのもあるが」


――今回のイベントで注目して欲しいところは?
「ファンの皆さんが観たい試合が観られれば良いと思う。今後も色々な棋士が出るイベントになってほしい」

「高校時代まではカツを食べていた」 藤田女流二段


そして最後は藤田女流二段。今回はゲスト解説者としての参加だったが快くインタビューに応じてくれた。


――このイベントについてはどういう印象?
「ここまでアットホームだとは思わなかった。いつもは壇上で対局するイベントが多いが、今回は近いというかもう本当に隣(笑)。間近で観てもらえると嬉しいし、原動力になる」

――対局前の勝負メシはある?
「高校生くらいまでは、対局前にカツを食べていた(笑)。最近では、生物を食べないように気をつけるくらい」

――将棋以外の趣味はある?
「ゲームが趣味で、特にWiiUで良く遊ぶ。同じく女流棋士の中村桃子さんとは、電話で話しながらスプラトゥーンというゲームでオンライン対戦したりしている(笑)。ただ勝ち負けのつく勝負事なので、ここでも真剣勝負になってしまう」

――女流棋士同士で遊ぶこともある?
「女流棋士同士も仲が良くて良く飲みに行ったり、遊んだりする。対局前日までは相手と喋らないが、終わったら普通に遊び行こうって(笑)。一緒にディズニーにも行ったりする」


――今回のイベントで注目して欲しいところは?
「いつもは遠くて見れないが、“手つき”に注目して欲しい。視線を追うのも面白い。棋士が今、どこで考えているのか、盤面をぐるぐる追う棋士もいれば1点だけを見つめる棋士もいる。局面にもよるが、棋士の表情を楽しんで欲しい」

以上、総勢7名のプロ棋士達が『勝負メシ』についてエピソードを語ってくれた。どの棋士も、対局に向けて何らかの『勝負メシ』があるようだが、意外にも過半数のプロ棋士達が「肉」料理を勝負メシとしていることがわかった。普段テレビやネットの画面越しで目にする対局は、私達が想像している以上に肉体的にも精神的にもハードな戦いということかもしれない。

なお今回のイベントでは、カウカウフードシステム提供の「MADAM SHINKO」のおやつが参加者全員に振る舞われ、対局で頭をフル回転させた棋士達のエネルギー補給を助けていた。





『対局』そのものだけでももちろん将棋を十分楽しむことは出来るが、棋士の食生活や振る舞いなど、将棋以外の「裏側の部分」にも注目するとより一層将棋を楽しむことが出来るだろう。

【関連情報】
◆「侍" -秋の陣-」イベント取材記事はこちら
「お好み焼き屋でプロ棋士がガチ対局 将棋盤が置かれるのは鉄板の上!」

◆将棋好きの店主・上野さんのお好み焼きが食べられるのは、東中野・本通り共栄会にある「侍"(ざむらい)」
侍゛ (ざむらい)
東京都中野区東中野5-5-7 セーリングビル 1F
JR中央線(各駅停車)【東中野駅】東口 徒歩3分
都営地下鉄大江戸線【東中野駅】徒歩6分
東京メトロ東西線【落合駅】徒歩6分

◆おやつタイム中のおやつ「MADAM SHINKO」の提供はこちら
株式会社カウカウフードシステム
http://www.cowcowfoodsystem.com/

◆ポスター制作
有限会社ピースクリエイティブ
http://pscreative.co.jp/