槙野智章(撮影:PICSPORT)

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10月のオーストラリア戦で、日本は守備重視の戦いぶりを見せ、最後は何とか守り切って勝点1を手にした。そのオーストラリア戦で左SBとして出場した槙野智章は、持ち前の攻撃力を封印し、飛び出すことなく堅実にプレー。流れの中からの失点を食い止めた。

はたして、この後ろに重心がかかった戦いぶりをどう捕らえているのか。ストレートに聞くと、槙野はしっかりと答えた。試合ぶりについて批判があるのも知っているようだ。

「もちろん内容を追求されるというのはわかっています。けれど、大事なのは結果なので。ワールドカップに行くため、切符を手にするために、まずはキチンと勝点を取るためのゲームをしなければいけない」

「内容という前に、結果を出してこその次だと思っているので、我慢する時期、みなさんが苛立つゲーム内容はあると思いますけど、そういう中でしっかり結果を出し続けていなければいけない」

「結果を求められるのが日本代表だと思っているし、そのためにはまず失点しない。相手に応じて守備的な戦いになると思いますけども、そういう中でもしっかり勝ち続けること、勝つことで、内容だったり攻撃につながっていくと思いますので、我慢する時が必要かと思っています」

そして外部からだけではなく、チームの中でも守備的なことに批判的な意見もあるようだ。

「実際、オーストラリア戦後に、やっぱり前の選手はもう少しゴールに近い位置でプレーしたいだったり、ゴールを取りに行くプレーをしたいと言っていました」

そう言う話はあったものの、槙野は今が過渡期なのだという。

「最低限チームとして負けない戦いをしたい、ポイントを取って帰りたいというのが一つのテーマでもありましたので、その結果が得られた上で、次のステージ、次の自分たちがやらなければいけない」

そうは言いながらも、自身の攻撃力も封印しているように見える。そのフラストレーションはないのか。

「フラストレーションは特にないです。もちろん、自分の攻撃力というのも生かす部分もあるかもしれない。けれど、そのためにはまずチームがしっかりと結果を出すこと。そしてチームが勝つためには、自分が攻撃に出るよりも守備でバランスを取ったり、守備の強さを発揮するところが大切だと思います」

勝利がすべて。そのためには自分の持ち味ですら犠牲にする。槙野はそう答えた。

もっとも、これだけで終わらないのが槙野だ。立派な決意に報道陣が聞き惚れていると、「大人になったでしょ?」と自らを茶化し、みんなの笑いを誘っていた。だが、もしかすると、照れ隠しなのかもしれない。

【日本蹴球合同会社/森雅史】