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10月25日〜27日に「SCCC(Santa Clara Convention Center)」で今年もARM TechCon 2016が始まった。初日の基調講演には当然ながら先日ARMを買収した孫正義社長が登壇、いきなり"カンブリア爆発"から話が始まった(Photo01)。

カンブリア爆発は、おおよそ5億3000万年前に発生した、生命種の爆発的な増加である。それまで数十種類しかなかった生命が、突如1万種以上増えた現象である。詳しい話はたとえばWikipediaのカンブリア爆発の項をご覧いただくとして、まずはこの孫社長が語るカンブリア爆発について(Photo02,03)。一般に生物は、外部の情報を得る「センサ」の情報を取り込み、そこから判断を行って行動を起こす。ここで三葉虫を孫社長が大好きな理由は「眼」が生まれたことだとする。「眼が生まれたことで、生物は自分でターゲットを見つけて、それを追いかけて捕食することが出来た。ところが眼が無い生物は、ランダムに逃げ回るしかない。捕食する側とされる側、どちらが良いか」と語った。

そして話は一転、IoTに移る。IoT+AIという組み合わせは、Photo04と非常に良く似ている。そして孫社長は「今後IoTも大爆発する」とする(Photo07〜09)。このIoTの動向は、カンブリア爆発とよく似ているというのが孫社長の主張で、この最後に「では(このIoTのマーケットで)捕食する側とされる側のどちらがいいのか?」と再び繰り返した。

続いて話は突如、セキュリティに移った。これはどちらかといえばこの後で行われたMike Muller氏の基調講演向けのイントロという感じであったが、「すでに多くの車には100を超えるマイコンが入っている。ただしこれらはいずれもセキュアではない。ではこれらがウイルスに侵され、ある日突然それがすべての車で活性化したらどうなるか? 例えばハイウェイで走ってる車がすべて一斉にアンコントロールになったらどうなるか考えてほしい。ここから先は別の人(Mike Muller)の担当なので説明しないが(笑)」と、Cortex-M23/33への前振りを行った。

セキュリティの後、話はAI側に移った。すでにディープラーニングを使った音声認識や画像認識が人間のレベルを超えている事を示し(Photo11)、こうしたAIを利用した成果を紹介した(Photo12)後で、IoTとAI(Photo13)を組み合わせることで人々の生活が大きく改善される(Photo14)という孫社長のビジョンが語られた。

最後に再びIoTに話を戻し、1兆個のIoTデバイスが人々の生活を大きく改善できる、という主張を繰り返して基調講演は終了した。

さて、そんなわけで直接的には「なぜARMを買収したのか」といった事は語られなかったが、基調講演の後で行われたディスカッション(Photo16)では「私は10年、20年といった長期的なスパンを視野に入れており、逆に四半期とか1年といった短期のことは任せている。大体私には24時間しかないから全部の会社を見るのは無理だ。個々の会社の運営はそれぞれの社長にまかせている」と直接的な運営を改めて否定した。また先日発表された10兆円ファンドについても聞かれ「1000億ドルは十分ではないが、スタートとして悪くない」と答えてFerguson氏の度肝を抜くといった場面もあった。

総じて今回はソフトバンクと孫社長のARM Ecosystemへのお披露目、という形で終わった形であったが、出だしとしては悪くないと思われた。

(大原雄介)