Facebook動画の新しい「平均再生時間」についてマーケターが理解しておくべきこと

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未だにさまざまな場面で取り上げられ、議論を巻き起こしているFacebookの動画再生時間問題。その内容は、「(動画広告を含む)動画の平均再生時間」として示してきたデータが、動画が3秒以上視聴された場合のみを計測対象として算出されていたため、実際よりも60〜80%も多くなっていたというものです。

動画広告については通常、インプレッション対して課金されるoCPM課金や、10秒以上視聴された場合のみ課金対象となるCPV課金方式がとられているため、広告費を不正に多く請求していたというわけではありません。

しかし、「Facebookでは動画が視聴されやすい」といった印象を広告主やマーケターに与え、広告費の配分に関する意思決定に少なからず影響していたことは間違いないでしょう。

Facebookは問題発覚後、すぐに謝罪し、「動画の平均再生時間」について新しい計測方法の導入を明らかにしました。しかし、その内容も単純なものではありませんでした。
Marketing Landの記事を参考に、詳しく解説していきます。

ポイントは「セッション」と「動画再生回数」

動画広告を含む「動画の平均再生時間」は、その動画のトータルの再生時間を、再生回数(自動再生&クリック再生)で割った値であるとFacebookは定義しています。

一見、非常にシンプルですが、注意すべきは「再生回数」の考え方です。

Facebookにおける計測方法では、「ユーザーセッション」として定めている30分の間に動画を再生した場合に「再生1回」とカウントします。すなわち、1セッション(30分)の中で複数回動画を再生しても、再生回数は「1回」なのです。

これによって何が起こるかというと、平均再生時間が動画尺を上回ってしまう可能性があるのです。
例えば、1セッションの中で20秒の動画を2回再生した場合、トータル再生時間が40秒なのに対し、再生回数はあくまで1回なので、平均再生時間が「40秒」となってしまいます。

あるいは、30秒の料理動画を例に、もっと複雑なケースも考えてみましょう。

ユーザーAさんの場合:
Facebookのフィードをスクロール中、料理動画を目にするが、特に興味は引かれず、少しだけ上に戻って、気になった別の投稿を読む。スクリーンの下の方では動画が再生されたまま。
その後、動画15秒時点の食材のシーンにふと目が止まり、そこから料理動画を視聴し始める。さらに見逃した前半部分を視聴するために、あたまから最後までリプレイした。

このケースの場合、リプレイのタイミングが同一セッション内で行われているため、トータル視聴時間45秒/再生1回という計測になります。

ユーザーBさんの場合:
Bさんは料理動画が好きなため、フィード上に流れてきた際に冒頭から視聴したが、15秒時点で嫌いな食材が出てきたため、視聴を止めてしまった。

このケースではトータル視聴時間15秒/再生1回です。

ではこの2人のユーザーのデータを合算した場合、どうなるでしょう?
トータル60秒/再生2回、つまり平均再生時間は30秒(完全視聴)です。実際にはユーザーAさんが1回しか完全視聴していないのに、です。

Facebookで開発中の新しい測定指標とは

多くの人が「平均再生時間」と聞いて思い浮かべるのは、「1回の動画再生における再生持続時間の平均」を示すもの、いわゆる視聴維持率の平均と同等のものでしょう。

しかしFacebookにおける平均再生時間はそれとは異なり、どちらかといえば「1ユーザーによる動画再生時間の平均」と捉えた方が良いことがお分かりいただけたでしょうか?(セッションという概念が加わるため、これも正確ではありませんが)

動画がどれだけ長く視聴されたかは、ブランドリフトやCVRなどに関わる重要な効果指標のひとつであり、平均再生時間が長い方が良いことは言うまでもありません。もし平均再生時間が動画尺を上回っていたら、何度も視聴される、非常に良いコンテンツだったと判断できるでしょう。
しかし複数のチャネルを使って動画を配信し、その効果を比較する場合は、Facebookがこのような計測方法を採用していることをマーケターはしっかり理解しておく必要があります。

またFacebook側もこの少々ややこしい問題を解決するための対策に乗り出しています。それが、今開発が進められていると言われる「Unique Average Watch Time」です。(まだ日本語訳が明らかになっていないため、本記事では仮に「ユニーク平均再生時間」と称します)

米Facebookの担当者によると、「ユニーク平均再生時間」では、その動画に対して各ユーザーがもっとも長く視聴した時の秒数のみを計測対象にし、トータル再生時間に加えることになります。

つまり上述の30秒の料理動画のケースで言うと、ユーザーAさんの動画再生時間は45秒ではなく30秒としてカウントされ、ユニーク平均再生時間は(30+15)/2=22.5秒と算出されます。

まだセッションの概念が残るため、完璧とは言えませんが、「動画再生1回あたりの再生時間の平均」に少し近いデータになると言えそうです。

今回のFacebookの騒動を受け、測定方法やデータの透明化について業界全体の関心がさらに高まっており、今後もさまざまな動きがあるかもしれません。
マーケティングを展開する企業としては、まずは各メディアの指標や定義について正しい理解を身につけ、その条件の中で最適な運用を目指すことが重要です。