長沢のシュートセンスは光る。一方、前線の起点役としてはここ2試合、前田や興梠との差が感じられた。(C)SOCCER DIGEST

写真拡大 (全4枚)

 G大阪が3連勝のあと、1分1敗と星を落として、第2ステージの優勝争いから大きく後退した。年間勝点でも3位の鹿島との8差を縮められなかった。
 
 10月1日に埼玉スタジアムで0-4と完敗を喫した浦和戦のあと、長谷川健太監督は険しい表情で語った。
 
「チャンピオンシップ進出は厳しくなった。もちろん最後まで諦めずに戦うが、カップ戦も残っているので、今季は今季のサッカーで、頂点を目指したい」
 
 そのように、事実上、これからはルヴァンカップと天皇杯の獲得を重視していく方針を示した。
 
 とはいえ、現状のチーム状態では、タイトルを獲得するのは難しい。なにより最近のG大阪からは、「怖さ」が感じられない。“ガンバと対戦するのは嫌だな”という威圧感を取り戻すことが最低条件と言えるだろう。
 
 最近の試合を見て感じるのが、ボールの収めどころが限られている、というか、見当たらないこと。ボールが行ったり来たりする展開が目立ち、下位相手であれば個の力でねじ伏せてきた。ただ、戦術的に共通点が多く個のレベルで拮抗するFC東京には引き分け、そしてボールポゼッションすることでリズムを作り出す浦和には完敗を喫した。
 
 FC東京戦のあと、ゴールを決めた田邉草民が語っていたコメントが印象的だった。
 
「相手(G大阪)はカウンターを狙っているので、あえて、僕らにボールポゼッションをさせていたと思う。でも、ここまで自由にボールを持たせてもらえるとは思っていなかった」
 
 あえて、相手にボールを持たせる――。それもひとつの手だが、常套手段にしてしまうと、非常にリスクが高くなってしまうことが、この2試合でより浮き彫りになった。
 
 G大阪が脅威の存在になるのは、ポゼッションとカウンターを臨機応変に使い分けている時だ。ただ、最近はカウンターの比重が高まり“過ぎている”ことが、田邉の言葉からも分かる。アデミウソンの個人技、長沢駿や大森晃太郎の“一発”によってチームは救われてきたが、なにかしらの打開策が迫られているのは事実だ。

【浦和 4-0 G大阪 】 屈辱…11人全員につながれた
 東口順昭と丹羽大輝は異口同音に言っていた。
 
「ラインを下げすぎてしまうと、間延びしてしまい、ガンバらしさを出せなくなる」
 
 例えばFC東京戦でリズムを掴んだ時間帯は、遠藤保仁が高い位置でボールを収めて脅威を与え、長沢がシュートまで持ち込む決定機も作った。遠藤自身も「高い位置でボールを持ってこそ、ガンバの攻撃は迫力が生まれる」と語っている。
 
 確かに宇佐美貴史(7月にアウクスブルクへ移籍)がいた間は、左サイドの高い位置に張り出してボールを収めることで、チーム全体の攻撃のリズムを生み出していた。しかし最近、センタフォワードでの起用が続く長沢は、シュートセンスがあるものの、ボールをしっかり収められずにいる。FC東京の前田遼一、浦和の興梠慎三とは、まさに「起点役」や「収めどころ」としての差を見せつけられたのも事実だ。
 
 また、サイドハーフで起用される倉田秋や大森も、どちらかというと、縦に鋭く仕掛けることで持ち味を発揮するタイプ。やや攻め急ぎ過ぎていて、倉田あたりがもう少し落ち着いてボールを収め、周りの良さも引き出してくれれば……と思うシーンも少なくなかった。
 
 そう考えると、できるだけ高い位置でボールを収めたい――という理由から、遠藤のトップ下やCF(ゼロトップ)起用が模索されてきた、長谷川監督の意図も分かってくる。ラインが下がってしまった浦和戦では、遠藤も低い位置でのプレーが続いたため、持ち味を発揮しきれなくなった。チームが受け身になることで、それぞれが特長を消し合ってしまった感は否めなかった。
 
 球際へのアグレッシブさや切り替えの素早さが評価される井手口陽介が、さらにチームをコントロールできるようになれば、チームの戦いの幅は広がるだろう。また、キープ力のあるアデミウソンや控えの続く藤本淳吾の力をいかにチームに還元するかも、浮上へのポイントのひとつになりそうだ。
 
 また、今野泰幸も守備時に受け身になってしまっている印象を受ける。それも間延びしているために、自らの間合いに相手を引き込めずにいるとも言える。とはいえ、やはり相手に襲い掛かる能動的な守備を前面に出してこそ、今野は生きる。大人しい今野のプレーは元気のないG大阪を象徴している。
 
 そんななか朗報と言えるのが、肉離れを起こしていた岩下敬輔の復帰だ。10月2日、J3・24節の富山戦で久々のフル出場を果たしている。浦和戦では辛酸を舐めた西野貴治のポテンシャルの高さも魅力だが、岩下もチームに欠ける「強気」な姿勢を吹き込む存在になり得る。
 
 強気な姿勢を取り戻し、時には時間をかけて、時には瞬時に、相手を飲み込んでしまうぐらいの勢いで襲い掛かる。“試合巧者”と言われてきたG大阪だが、今チームに求められるのは、洗練よりも不器用でも構わないからゴールに襲い掛かろうとする貪欲さかもしれない。前線にボールが入った瞬間にゴールを予感させる、そんな獰猛なガンバが見たい。
 
 G大阪は今日10月5日午後7時から、ホームの市立吹田サッカースタジアムでルヴァンカップ準決勝第1戦・横浜と対戦する。
 

取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)