アウェーのタイ戦は原口と浅野(18番)のゴールで2-0の勝利。一息つけたとは思うけど、今の日本代表に満足している人はほとんどいないんじゃないかな。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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 ロシア・ワールドカップ行きを懸けたアジア最終予選で、日本は2試合を終えて1勝1敗。勝点3で、今のところグループ3位にいる。
 
 ホームで迎えたUAEとの初戦は本田のゴールで先制したけど、FKとPKで失点し、逆転負けを喫した。まさかの黒星スタートとなったけど、続くアウェーのタイ戦は原口と浅野の活躍もあり、2-0と勝利を収めた。
 
 星を五分に戻したとはいえ、先行きは不安だよ。タイに勝ったところで、一息つけたけど、満足している人はほとんどいないんじゃないかな。
 
 これでUAEに負けたダメージを回復できたわけでもない。失った勝点3を取り戻すには、グループの順位で上にいるオーストラリアかサウジアラビアに勝たなければダメだ。この2か国に勝ってはじめて、イーブンの状態になる。
 
 10月シリーズではオーストラリアとアウェーで戦うけど、その前にホームでのイラク戦がある。ここで万が一、敗れるようなことがあれば、ロシア行きは本当に厳しくなるよ。
 
  崖っぷちとは言わないまでも、楽観視できない状況に立たされているハリルジャパンに、リオ五輪代表の監督だった手倉森が、コーチとして復帰することが正式に決まったね。ニュースでもそれなりに取り上げられているけど、新たに入閣するわけじゃないし、そこまで騒ぐ必要はない。
 
 いずれにしても、よく分からない人事だよね。手倉森の人柄は良いけど、監督として五輪で結果を残したわけではない。メダル獲得を目標に掲げていたにもかかわらず、手倉森ジャパンはグループリーグさえ勝ち抜けなかったんだ。結果がすべてのこの世界で、勝てなかった監督がどうして評価されるのか。そこまで日本には人材がいないのだろうか。
 
 五輪という国際舞台での成績で言えば、4強入りしたロンドン五輪代表の監督である関塚のほうが上なんだけどね。
 
 選手の気持ちを汲む術に長けているとか、手倉森のそういう面が評価されていると聞くけど、そんな監督はたくさんいる。でも、選手のメンタルをよく理解するのと、チームの強化は別の話だ。それで強くなれば苦労しないよ。
 
 そもそも、手倉森がそこまで必要な人材だったならば、なぜ最終予選が始まった時点で呼び戻さなかったのか。なぜこのタイミングなのか。UAEとタイに2連勝していたら、今回の再入閣は果たしてあったのかと邪推したくなる。
 
 手倉森の復職は、ハリルホジッチ監督との会談を経て決まったようだけど、果たして内実はどうなんだろうか。協会主導で事が運んでいたなら、ハリルホジッチ監督も面白くないよね。
 
 状況が危うくなったチームが、コーチに新たな人材を加える。どこかで聞いた話だと思ったけど、まるでグランパスのようだね。監督の小倉ではどうにもならなくなって、経験のあるジュロヴスキーをコーチに据える。その後のグランパスがどうなったかは、みんなも良く知っていると思う。
 
 今となっては、ジュロヴスキー招聘は、有事に備えたリスクマネジメントだったというわけだ。
 
 
 代表でも同じことが起こらないとは限らない。むしろ、協会からすれば、もしもの時のために先手を打っておいたんじゃないかな。ハリルホジッチ監督が「もう1試合、負けたら、俺はクビになるのか?」と疑っても不思議ではないよね。その意味では、本人にプレッシャーをかけたことにもなる。
 
 手倉森のコーチ復帰は、おそらくは「保険」のようなものとも捉えられる。今後の最終予選の戦いぶりから、ハリルホジッチ監督の更迭を決断しなければならなくなった際、そこでまた新たな監督を探すには時間がかかるし、違約金のことを考えても、予算の不安がある。でも、コーチに控えている手倉森を暫定でもいいから監督に昇格させれば、当面の問題はひとまずクリアされる。
 
 96年のアトランタ五輪以降、五輪の代表監督が大会終了後にA代表のコーチに就くのは初めてらしい。新たな歴史が作られたわけだけど、良い方向に進めばいいよね。