正しい野球を導き出した元広島の「いぶし銀」コーチ

今年4月から四国学院大香川西のヘッドコーチに就任した中尾 明生さん

  一時、散見されていた「粗さ」は消え去っていた。アップのキャッチボールから丁寧さと試合を想定した動き方を見せる四学大香川西の選手たち。いざ、試合に入っても打球とグラブ、足運びを融合しながら1つ1つのアウトを確実にとっていく。「まだまだです。夏のメンバーが数多く残っているので」と、日大一(東京)では一塁手として甲子園出場を経験し、日大では東京ヤクルトスワローズ・真中 満監督と同級生の室伏 昌英監督は謙遜するが、これなら無失策も必然である。

 では、そのキーマンとは?「守備の基本を個人に合わせて教えてくれる」(室伏監督)4月から就任したヘッドコーチが、そのカギを握っていた。中尾 明生(なかお・あきお)氏。南宇和(愛媛)から拓殖大を経て1975年にドラフト外で広島東洋カープに入団すると、内野守備のスペシャリストとして1979・1980年の日本一にも貢献し、広島で9年間。南海ホークスで5年間プレー。引退後も福岡ダイエーホークス、大阪近鉄バファローズで11年守備走塁コーチや東北楽天ゴールデンイーグルススカウトも務めた「いぶし銀」である。

 「高校野球の先も続けたい子もいるし、高校野球で野球を終わる子もいるので、求めすぎてもアカンと思っている」と高校野球指導の難しさを語る中尾氏。その一方で指導方針は「しっかり大事にボールを投げられるようにしてあげること」と一貫している。1番遊撃手の鈴木 涼太郎(2年主将・右投右打・174センチ68キロ・枚方リトルシニア<大阪>出身)がその指示内容を詳しく説明してくれた。

 「守備は個人ノックが多いです。そこで中尾コーチからはじめに言われたことは「常に動いている意識を持て」ということ。そこで細かい動きや声を含めて動くような形を作ったら、より早く一歩目が切れるようになりました。守備の不安が少なくなったことで打撃もよくなってきたと思います」

 事実、この高松北戦では大会直前の登録変更でメンバー入りした3番・光元 悠羽(2年・左翼手・右投右打・173センチ65キロ・広島中央リトルシニア<広島>)の2長打2打点など計10安打6打点。同日・読売ジャイアンツ戦で高卒2年目一軍デビューを果たした塹江 敦哉をはじめ、毎年好投手を輩出している高松北を圧倒したことは、夏にコールド負けを喫した高松商が同ブロックにいる今後の戦いに向けて大きな追い風となるに違いない。

 そのベースは強打の陰にある「堅守」。四学大香川西は25年ぶりセ・リーグ優勝を果たした広島東洋カープOBの指導と、同じ手法で準優勝・翌年センバツ出場を果たした2009年以来、7年ぶりの秋季四国大会出場を獲りにいく。

(文=寺下 友徳)

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