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●生理痛や過多月経の緩和が期待できる避妊用器具
女性の生理痛や過多月経などの生理トラブルの治療として、避妊薬である低用量ピルが使われることがあります。そして最近では、「ミレーナ」と呼ばれる避妊用器具も、新しい治療の選択肢として注目されています。

ミレーナとはどんなもので、どのように生理トラブルを緩和してくれるのでしょうか。

○子宮内黄体ホルモン放出システム「ミレーナ」

ミレーナとは、「子宮内黄体ホルモン放出システム」という、T字型をした小さな避妊用器具のこと。器具には女性ホルモンの一つである黄体ホルモン(プロゲステロン)が付加されていて、子宮内に入れると、黄体ホルモンを少量ずつ放出する仕組みになっています。この黄体ホルモンには、子宮内膜の増殖を抑える作用があるため、ミレーナを使っていると、受精卵が着床するのを防いで妊娠を防ぐことができるのです。また、子宮内膜が薄くなることで、経血の量が減少するという効果もあります。

ミレーナの避妊率は高く、正しく使用すれば、避妊率90%以上のピルと同じくらいの避妊効果を発揮します。子宮内で避妊効果が持続する期間は、3年から5年程度。使いたい場合は、婦人科や産婦人科で診察を受け、ミレーナが適しているか判断した上で、医師に挿入してもらう必要があります。

○2014年から過多月経の治療法として保険適用に

2007年に避妊器具として日本国内で承認されて以来、ミレーナは主に、長期間の避妊をしたい女性の間で避妊法の一つとして使われてきました。2014年には、過多月経や月経困難症の治療法として保険診療が適用となり、生理トラブルに悩む女性にとって新たな選択肢としても注目されています。

先述の通り、ミレーナには子宮内膜を薄くする作用があるため、過多月経や生理痛を緩和する効果が期待できます。以前は装着にかかる費用が高価だったことから、あまり普及していなかったミレーナですが、保険適用になったことで費用が大幅に下がり、一般の女性にとって現実的に選択できる治療法となりました。医療機関や診察内容にもよりますが、保険診療の場合、挿入するときの保険負担費用は1万5,000円前後で済むことが多いでしょう。

●副作用やリスクを「ピル」と比較
○ピルより副作用・血栓症のリスクが低い

注目されている理由は、費用の問題だけではありません。ミレーナには、同様に過多月経の治療や避妊目的として多く使われている低用量ピルと比べて、いくつか大きなメリットがあるのです。 一つは、低用量ピルで生じることがある頭痛や吐き気、むくみなどの副作用が出にくいこと。これは、ミレーナは子宮内でホルモンを放出するため、血液中にホルモンの成分が入りにくいためです。

もう一つのメリットは、血栓症のリスクがないこと。ピルは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモンの2種のホルモンを含む薬剤ですが、そのうち卵胞ホルモンには、血液を固めやすくする作用があります。そのためピルは、過多月経の症状があっても、高血圧や肥満気味、喫煙しているなど、血栓症リスクがある人には通常は処方されません。一方のミレーナは、黄体ホルモンのみを付加しているため、それらのリスクがある人でも使用が可能な場合があります。

ただしミレーナでも、はじめの1〜3カ月程度は、出血や下腹部痛のような副作用が起こることがあります。さらに、まれではありますが、使用中に外れる可能性もないとはいえません。挿入後は定期的に検診を受け、ミレーナの位置を確認することが不可欠です。また、挿入中に痛みや違和感を覚えたときは、早めに受診することが重要です。

過多月経や生理痛に悩む人や、それらの治療のために使っている低用量ピルが合わないと感じる人は、ミレーナを使うことで悩みが解消される可能性があります。治療の選択肢としてのミレーナに興味を持った人は、まずは信頼できる婦人科医に相談してみましょう。

※画像は本文と関係ありません

○記事監修: 星合明 医師

星合勝どきクリニック 院長
1986年獨協医科大学・医学部医学科卒業。1992年獨協医科大学大学院卒業。同年獨協医科大学付属病院産婦人科臨床助手。1994年より獨協医科大学産婦人科教室非常勤講師。その後、文京区星合産婦人科病院副院長を経て2001年2月より、東京都中央区勝どきにて「星合勝どきクリニック」を開設、医長を務める。

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