新幹線の車内販売で食べられるアイスクリーム、「固いこと」でも知られていますが、いったいなぜ固いのでしょうか。そこにはふたつの理由がありました。またこのアイスクリーム、イタリア風に工夫して食べる人もいるそうです。

「固い」ふたつの理由

 新幹線の車内販売における「定番」のひとつ、アイスクリーム。「固いこと」でも知られており、溶けるまで待ちきれず、削るようにして食べたことのある人、いるかもしれません。東海道新幹線で車内販売を担当しているジェイアール東海パッセンジャーズによると、それを販売した際、食べるまで「少々お待ちください」と案内しているそうです。


東海道新幹線では現在、「バニラ」「抹茶」「みかん」の3種類が販売されている(2016年7月、恵 知仁撮影)。

 このアイスクリーム、そもそもなぜ固いのでしょうか。製造するスジャータめいらく(名古屋製酪)によると、「乳脂肪分が高く空気含有量が低いため濃厚、濃密で溶けにくいこと」、そして「販売時、ドライアイスによる温度管理が徹底されていること」が理由といいます。

社長も関わり「新幹線にふさわしいアイスクリーム」を

 一般社団法人 日本アイスクリーム協会の資料では、“いわゆるアイスクリーム”は「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」「氷菓」の4種類に分けられ、このうち「アイスクリーム」は「乳脂肪分8%以上」がひとつの基準で、「乳脂肪分が最も多く含まれており、ミルクの風味が豊かに感じられます」とのこと(乳脂肪分が次に多い「アイスミルク」は3%以上)。また、空気含有量(オーバーラン)が低いと「ねっとりした重みのある味」になるといいます。


乳脂肪分が15.5%ある「バニラ」のアイスクリーム(2016年7月、恵 知仁撮影)。

 この車内販売のアイスクリーム、特に「バニラ」は乳脂肪分が15.5%と高く、かつ空気含有量が低いため濃厚で溶けにくく、販売管理がしっかりしていることから「固い」というわけです。

「日本を代表する新幹線のなかで召し上がっていただくのにふさわしい特別なアイスクリームということで、当時の社長(現・日比孝吉会長)が開発に関わり、とことん品質にこだわって作った商品です」(スジャータめいらく(名古屋製酪))

 同社によると、1991(平成3)年ごろに新幹線での車内販売が始まったというこのアイスクリーム、過去に販売されたものを含めると「バニラ」のほか「抹茶」「みかん」「りんご」「白桃」「メロン」「いちご」「コーンポタージュ」などの商品があるそうです(乳脂肪分は種類によって異なる)。

イタリアンな食べ方をする「通」も

 この新幹線アイスクリーム、車内販売を行うジェイアール東海パッセンジャーズのパーサーによると、食べ方を工夫している人もいるそうです。

 車内販売で、アイスクリームとあわせてホットコーヒーも購入。アイスクリームの中央部を少し削って、そこにホットコーヒーを流し込む、というものです。アイスクリームやジェラートにエスプレッソなどの飲料をかけて食べるイタリアの「アフォガート」のようなものでしょうか。


イタリア風にした車内販売のアイスクリーム。コーヒーはスプーンですくって入れると、こぼれにくく、味も調整しやすい(2016年7月、恵 知仁撮影)。

 実際に「バニラ」で試してみたところ、アイスクリームの残り分量に応じて少し入れてみたり、多めに入れてみたり、ときには何もせず食べるなどして、味わいの変化を楽しめました。乳脂肪分の高い「バニラ」のアイスクリーム、コーヒーとの相性の良さはいうまでもないでしょう。ちなみに、ホットコーヒーを入れることにより溶けやすくなって早く食べられる、という効果もあります。