抜群の認知度を誇るオンラインゲームメーカー「ガンホー」が運営する「パズドラ(PAZZLE&DRAGONS)」。リリースした途端に爆発的なブームとなってから4年を経過した今でも、人気は健在です。無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では、その秘密を徹底分析しています。

ロングテール

今回はスマホゲームで認知度ナンバーワンの企業を分析します。

●ガンホー(オンラインゲームメーカー)     

今回はガンホーといえば、やはり「パズドラ」ですので、リリースから4年たった「パズドラ」にフォーカスをあてます。

◆戦略分析

■戦場・競合

戦場(顧客視点での自社の事業領域):スマホ向けゲーム競合(お客様の選択肢):ミクシィ(モンスト)、コロプラ、LINE(ディズニー ツムツム)、グリー、DeNA など状況:スマホゲームの市場規模はここ数年、ゆるやかな拡大傾向のようです。

■強み

1.長い期間、楽しめる(飽きない)

特定時間に出現するダンジョンなどがあるコラボイベントがたくさんある新しいモンスターが続々登場

2.無課金でも十分楽しめる

パズル自体がおもしろい。達成感、爽快感が得られる通学や通勤時でも簡単に遊べるパズルがうまくなればなるほど強い敵も倒せる

⇒上記の強みを支えるコア・コンピタンス
★「長くユーザーに楽しんでもらうノウハウ」

長期的な利益創出に向けて、MAU(月間アクティブユーザー数)の規模の維持を最も重要視しています。ユーザーとの直接のコミュニケーションにこだわる
→自社運営のユーザーサポート、ツイッターやニコニコ生放送、ガンホーフェスティバルなどユーザーとの接点を重視。

上記のような「ユーザーを飽きさせないノウハウ」があるからこそ、強みを実現できているといえます。

■顧客ターゲット

スマホゲームユーザー(幅広い層に支持されています)
→リリース当初は30代後半の「ファミコン世代」がターゲット

次ページ>>ガンホーの認知度を高めるための「戦術」とは

◆戦術分析


■売り物

パズドラ(パズル&ドラゴンズ)
→パズルゲームとロールプレイングゲーム(RPG)が組み合わさったスマホ向けゲーム(直感や達成感を意識して作られているそうです)

2012年2月のリリースから4年が経過しており、日本のダウンロード数は4,100万件を超えています。北米で1000万ダウンロードを突破。

■売り値

無料
→ゲームを有利に進めるためやガチャを回すために必要な魔法石を購入することもできます。
【魔法石の価格】
1個:120円、6個:480円、12個:840円、30個:2,000円、60個:3,800円、85個:5,000円

■売り方

積極的にTVCMを展開
→全編アニメにて制作された「TV-CM「転校生」篇はユーチューブでの視聴回数が277万回。積極的なコミュニケーション
→「ガンホーフェスティバル2016」では、9カ所のイオンモールと連携し予選を実施。幕張メッセで「パズドラジャパンカップ」の決勝戦を含め、イベントを開催。2015年は11万人を集客。

■売り場

公式サイトよりApp Storeなどから無料でダウンロード魔法石はパズドラ内の魔法石ショップで購入

※売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。

次ページ>>ガンホーが重要視している「ロングテール」とは

まとめ(戦略ショートストーリー)

幅広いスマホゲームユーザーをターゲットに「長くユーザーに楽しんでもらうノウハウ」に支えられた「長い期間、楽しめる」、「無課金でも楽しめる」という強みで差別化を実現しています。

積極的にTVCMを展開することで認知度を高めるとともに、無料で試してもらい、ゲームの面白さ(パズル+RPG)を体感してもらうことで消費者の支持を得ています。

■分析のポイント

「ロングテール」

ガンホーは平成27年度の決算で減収減益となったことを公表しています。前年と比べて

売上は、約1,730億円→約1,543億円営業利益は、約942億円→約724億円

となっています。主な原因は、「パズドラ」の売上減となります。

ガンホーの売上の約9割を「パズドラ」関連の売上が占めていますので、「パズドラ」の売上が下がるということは、ガンホーへの影響が非常に大きいということですね。

単純に「パズドラ」の人気が落ちてきたということで終わらせずに、もう少し深堀りしてみます。

2016年1月から3月期の決算説明会において、森下社長が「一つ一つのゲームをロングテールで育てていけるというのが我々の一番の強みだと思います」とコメントされています。

森下社長は「ロングテール」を「息の長い」というような意味で使われているように見受けられますが、もともと「ロングテール」とは、売れ行き順に商品を横軸に並べ、販売数を縦軸にとったグラフを書いた時に現れる人気のない商品が並んだ長い「しっぽ(テール)」のことを指します。

イメージ図はこちら↓

例えば、Amazonではこの長いしっぽ(人気のない商品群)が、全体の売上の3分の1を占めているようで、重要視されています。

次ページ>>驚異的な長さで継続中の人気

このロングテール理論をガンホーにあてはめてみると、商品を課金者へ、販売数を課金額に置き換える形になります。具体的には、課金者を課金額順に横軸に並べ、課金額を縦軸にとったグラフを書くと、恐らく少額課金者が並んだ長い「しっぽ(テール)」が現れることになります。

ここでのポイントは、非常に多くの課金者がいれば、例え少額の課金であっても、掛け合わされることで、莫大な額になるということです。

ガンホーはMAU(月間アクティブユーザー数)を最も重視していますが、このMAUが多ければ多いほど、課金するユーザーの比率を低く抑えても多くの課金者を確保することができ、ロングテールが生み出す売上の恩恵を受けられるということになります。

そして、このMAUですが、減少傾向であるとはいえ、2016年3月のMAUは、2013年3月のMAUと同水準となっています。つまり、3年前の水準は維持しているということであり、一時期の爆発的なブームの後も人気を維持しているということです。これはすごいことです。

競争が激しく、長く人気が続かないスマホゲーム業界においてリリースから4年以上経ったゲームが3年前の水準の「MAU」を維持しているということは驚異的ともいえます。

今後もMAUの維持・拡大という挑戦的な目標を掲げていますし、リリースから5年、10年たったときに「パズドラ」がどのような存在になっているか楽しみですね。

世界にも拡大していくようですので期待したいです。

image by: Shutterstock

 

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出典元:まぐまぐニュース!