「代表選手になったことで育まなければいけない人間力があります」。手倉森監督は、選手たちに代表選手としての自覚も求めたという。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 “仮想ナイジェリア”のガーナを3-0で下し、チーム作りをまた一歩前進させたU-23日本代表。試合後、記者会見に臨んだ手倉森監督は、被災地・熊本へ勝利を届けられた喜びと、強化試合で手にした収穫について語った。

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――試合の感想をお願いします。
 
 この結果を受けてホッとしています。きっちり勝てて良かったな、と。選手たちはしっかりと思いを汲んでピッチで表現してくれました。
 
 日本サッカーの未来と希望、そして被災地・熊本の希望になろう、と。困難な状況にある人たちに対して困難を乗り越えてきた我々が希望になろう。その覚悟を示せと言って送り出しました。最初からエンジンいっぱいで前半のうちに3点仕留めたのが、彼らの覚悟だったと思います。
 
 スピードとパワーを身に付けなければいけないゲームで、ちょっと後半の終盤にスピードとパワーが落ちましたけど、ある程度はそれを身に付けるべくパワーを注いでくれて良かった。
 
 また1万人を超えるお客さんが、熊本にエネルギーを届けるという同じ思いを持って、スタンドとチームが一緒になれた雰囲気のなかで、3-0で無失点で収められたのだと思います。集まってくれた皆さんに感謝したいですし、ぜひこれからも一緒に戦ってほしいと思います。
 
――手倉森監督は東日本大震災時にベガルタ仙台を率いて被災者の希望になることを目指し、今回図らずも同じような状況になりました。希望になるという意味で選手の変化をどう感じられましたか?
 
 選手たちはうまくしてプロになれたわけですが、いろいろな力があってプロになれたわけです。そして代表選手になったことで育まなければいけない人間力があります。社会で起きたことに対して、思いを寄せられるかどうかが大事になる。
 
 仙台の時もそういったところに働きかけ、思っていた以上の力を発揮できました。このU-23代表の選手たちも、今回のキャンプとチャリティマッチが持つ二つの意味合いを理解して、サッカー界と被災地の希望になるのだという思いが表現できた時、サッカー選手として以上に人として成長できるのかなと。そして運も持てるようになってきたのかなと思います。
 
 期待の低かったこの世代が、本当にいろいろなことを為し遂げられるようになってきているのは、彼らがそういった思いの部分を感じ取れるようになってきているから。予選の時は反骨心から、そして今回は希望になるんだという思いがある。そういう思いから彼らは成長してくれているなと思います。
――現時点で強化がうまくいっている部分は? また、今後どういう部分の強化が必要ですか?
 
 昨日ミーティングで、足下でポゼッションし過ぎていると話しました。それはJリーグの中で(通用する)シチュエーションだ、と。ポゼッションのクオリティは高まっているとは思いますが、インターナショナルな戦いについて(イメージを)描かないといけない。
 
 それはやっぱり0-0であれば、ボールを奪った時にゴールへ突き進むこと。彼らがその重要性を理解してくれて、その通りに奪った瞬間からゴールへ向かっていったなと思います。
 
 世界の強豪国に比べても日本は組織という強みがありますが、ボールを握り続けることはまずできない。やっぱり良い守備からの良い仕掛けを磨いた先に、世界で勝てる確率が高まっていくのだと思っています。
 
 それで仕留められるようになれれば、育成年代から取り組んできたポゼッションも上手く機能するようになる。まず勝つためにゴールへ向かう姿勢を高めているところかもしれないし、それは高め続けなければいけないものだと思います。