インターネット黎明期のブラウザ戦争は今は昔で、現在、「このブラウザがいい!」とこだわりを持って使っているのは、ほんの一部の層だけかもしれない。

特に、スマートフォンの場合、ブラウザを使っているという感覚は薄い。
Webサービスの多くは専用のアプリを用意しているからだ。

ブラウザはそもそも"Webクライアント"
ざっくりいうと、「インターネット」は異なるデバイスやソフトウェア、プロトコルを用いるコンピュータやネットワークを相互に接続したネットワーク網だ。
その仕組みの上でHTML(Hypertext Transfer Protocol)で記述されたドキュメントがURLを使って相互参照できるようになっている。

これが「Web(World Wide Web)」。私たちがよく見ているWebサイトやWebサービスも、このWeb上のもの。

ブラウザはそもそもWebシステムの中のクライアントだ。
このページ(URL)を見たいとWebサーバにリクエストして、送られてきたHTMLドキュメントを画面にレンダリングしてくれる。初期のWebの利用形態は、基本的にはこの図式だ。

ブラウザで表示できるようにしておけば、ほぼ全ての世界に向けて発信することができるので、ブラウザは重要だった。

この頃がブラウザには黄金期だったのかもしれない。
実際、HTMLの機能の拡充、標準化などの整備が進む中、MozaicやNetScape、Internet Exploreと各ソフトウェアベンダーが、競ってシェア拡大のための独自機能を追加するなど、動きが活発だった。

いわゆるブラウザ戦争は、Webにおけるリッチな表現を加速したというメリットがある反面、ワンソースでマルチデバイス対応を謳ったHTMLにとって、各ベンダーの独自機能(タグ)は混乱しかもたらさなかったともいえるが。

◎「クライアントアプリ」が増える中、ブラウザはどう進化するか?
しかし言ってみれば、ブラウザはWebクライアントの1つでしかない。

その事実をつきつけられたのは、やはりスマートフォンが登場してからだ。

スマホアプリがブームになったのは周知のとおり。
いまでは当たり前のように、Webサービスの多くが専用アプリを用意している。
そればかりではなく、PC用にもアプリを準備するようにもなっている。
Twitterは公式Mac用アプリが出ているし、Facebookも公式Mac用のMessengerアプリを準備というニュースが今年の始めに流れたりした。もちろん、非公式アプリは多数出ている。

こうして、ユーザーやサービスの提供元がブラウザ離れの傾向を見せる中、いまブラウザはどう進化しようとしているのだろうか。

「Opera」は無料で内蔵VPNサービスを搭載するとし、すでにOperaの開発バージョンにはVPN機能が搭載されている。
VPN(仮想プライベートネットワーク)は、簡単にいうと、インターネットを使って仮想的にイントラネットを構築してしまおうというもの。
主に、位置情報を隠す、特定の国からしかアクセスできないコンテンツにアクセスしたいという目的で利用される。なお、正式版のOperaへの搭載は2016年後半といわれている。

一方、元・Operaの開発者が作った新しいブラウザ「Vivaldi」は徹底的に個人ユースに合わせタブ操作をカスタマイズできるよう、タブ機能を強化する動きを見せている。

いずれにせよ、ブラウザをより使い込む層、パワーユーザーに向いている。

2強ブラウザ「Safari」、「Chrome」とも、モバイル版・PC版において、それぞれ性能も機能もそこまでの大差がないというのが、いまの状況だ。

SafariはiPhone・iPadの標準ブラウザであることの強み、iOSとの連携機能に大きなメリット(リーティングリスト、コンテンツブロッカーなど)がある。
一方、Chromeは、Googleアカウントとの連携が大きなメリットだ。

このあと、Opera、Vivaldiがその2強に果たしてどう追い上げていくか? 
パワーユーザーを獲得し、さらにエントリーユーザーに近い層まで取り込むことができるのか、期待したい。


大内孝子