16日、テレビ朝日「報道ステーション」では、マイアミマーリンズ・イチローに行った単独インタビュー後編を放送。行く気がなかったという甲子園や野球人生最大のスランプに陥った高校時代を振り返った前編に続き、後編では自身の野球論やトレーニング論を力説した。

野球解説者・稲葉篤紀氏が聞き手を務めたインタビュー。主なやり取りは下記の通りだ。

<選手寿命の話から練習(遠投)について>

稲葉:寿命が延びてるよね?プレーヤーとしての。

イチロー:延びてるんですか?

稲葉:延びてるでしょ。

イチロー:(プロ野球選手の現役生活)平均寿命って30歳くらいですよ(約29歳)。それってあまり変わってない筈ですよ。

稲葉:40(代)の選手っていた?当時。

イチロー:門田博光さん。ホームラン打ってブーマーにやられた、脱臼(ブーマーとハイタッチをした瞬間に肩を脱臼した)。門田さんは僕より下ですからね、多分。年齢が(当時は41歳)。ありえないでしょ。

稲葉:ありえないよね。

イチロー:門田さん、ふけすぎでしょ。

稲葉:そっちね。

イチロー:そう考えたらクソがつくジジイですよ。

稲葉:(イチローの)練習2日間見させてもらったけど、ありえない。

イチロー:何がありえない?

稲葉:全てが。スイングだったり、打球もそうだし。

イチロー:それは40代として?

稲葉:いやプロ野球全体としても。こんだけキャッチボールで遠投している人も見たことない。

イチロー:遠投今やらないんでしょ?どういう理由なんですかね。確かに僕と今やってるオズーナっていう選手は肩が強いんですけど、遠投であの距離になると急に肩が上がる。肩を平行に保たないと意味がない。変な癖ついてしまって。それで(遠投を)やらないって人はいると思う。

でも長い距離投げてるからといって、短い距離が簡単になるかといったらそうじゃない。去年僕ピッチャーやったじゃないですか?あれで痛感した。普段あれだけ遠投やるんですよ。ピッチャーで20球くらい軽くいけるんだろうなって思ったら翌日バリバリ。動けなかったですよ、3日間くらい。緊張感と。全力で投げてないんですよ。それでも全然使う筋肉が違う。だから両方やらなきゃいけないんですよ。近くで全力で投げて遠くでもやらなきゃいけないしっていうのが僕の中で確立している考え。

稲葉:ただ遠投しているだけでなくて、球を見てても最後落ちない。

イチロー:回転数を上げてるんですよね。回転数を上げて空気抵抗、風に負けない。あってもそれに乗れるような回転をかけるテクニックとしてある。

稲葉:そういうのを見ていて、すごい分かる。

イチロー:稲葉さん、そんなの分かるんですか?だったらもうちょっと投げられたでしょ?

稲葉:分かっててもできない。肩弱いから。

イチロー:分かっててもできないことって確かにありますね。生まれもった才能とか努力では掴めないものってあるじゃないですか。それは足だったり肩だったり。バッティングで言うなら、必ずグリップがここ(構えの位置)に残ることだったり。野球の動きってここ(胸)を見せたら絶対ダメじゃないですか。投げる、打つ、バントもそうですよね。バントもここ(胸)見せたらうまくできない。バッターってここ(胸)をピッチャーに見せたら絶対ダメでしょ。見えたら負け。それが早ければ早いほど負け。

<イチローのトレーニング論>

稲葉:自分の癖ってありますよね。そういうのは分かっておいた方がいい?

イチロー:もちろんです。基本的には人体の動きを理解しながらプレーをすればケガを防ぐこともできる。例えば、肩の力が入ってる。「リラックス、リラックス」って言われても、ここ(肩)だけやっても無理なんですよ。僕の感覚ですよ。膝の力を抜かなきゃいけない。膝の力を抜いたら肩も抜ける。そういうことを理解しているかどうか。もの凄く大事。目に見えた部分しか言えない人が多いです。

稲葉:今トレーニングで体を大きくして、それを活かす、みたいなのが流行ってる。

イチロー:いやいや全然ダメでしょ。自分が持って生まれたバランスがありますから、それを崩しちゃダメ。虎とかライオンとかウェイトしないですから。人間知恵があるから色々やっちゃう。本来のバランスを保ってないと。筋肉が大きくなっても、それを支えている腱とか関節は鍛えられないんで。だから壊れちゃう。重さに耐えられない。大きくしたら膝にくるし、関節きますよね。当たり前のことなんですよ。人体を理解すると動きとかトレーニングに大分差が出ると思います。

稲葉:それ分かったのはいつくらい?

イチロー:僕も結構やりましたからね。ウェイト。やって体が大きくなる。バカだから嬉しくなるじゃないですか。春先スイングスピードが落ちるんですよ。回らなくなっちゃう。この(胸)辺が。そういう失敗を毎年重ねて何年くらいですかね。6、7年は同じこと繰り返しましたよ。

稲葉:その時、ふと気付いたの?

イチロー:毎年不思議だったんですけど春先全然動けないんです。シーズン入ったら痩せてくるじゃないですか。シーズン入ったらそんなトレーニングはできないんですよ、ガンガン。春作った体をキープできない。そうするとスイングスピードが上がってくる。無駄なところが省かれていく。それが答えじゃないですか。本来のバランスを崩しちゃダメなんですよ。情報が多すぎて、どれをピックアップしていいかという問題はありますよね。

稲葉:今そういう時代になっている。知識があり過ぎる。

イチロー:頭デッカチになる傾向はあるでしょうね。

稲葉:でも、最短で行ける可能性もあるじゃない?

イチロー:無理だと思います。失敗をしないで辿り着いたと。全くミスなしで辿り付けないんですけど、着いたとしても深みは出ないですよね。単純に野球選手としての作品がいいものになる可能性は、可能性ですよ、僕はないと思います。あったとしてもやっぱり遠回りすることは凄い大事。無駄なことって結局無駄じゃないっていう考え方は凄い大好きで。でも今やってることが無駄だって思ってやってるわけじゃない。合理的な考え方って凄く嫌い。遠回りすることが一番近道だと信じてやってますけどね。これ何分くらい回しました?

スタッフ:1時間18分です。イチロー:えっ?エグイって。マジですか。ウソでしょ。エグイって。