男性なら一度はお世話になったことがあるであろう、白ブリーフ。懐かしさと少しの照れくささがよみがえる人もいるに違いない。そんなブリーフに描いた作品を展示する、川平遼佑さんの個展「Midnight Boy」が東京・西麻布のNANATASU GALLERYで3月27日(日)まで開催中だ。




会場にはブリーフ40枚がずらり


今回が川平さんの初個展。『おねしょ』をテーマにした作品は、記憶の中で眠っていた断片的な怖い夢がモチーフとなっているそう。そこに新たな物語を再構築し、パンツドローイング作品や、アニメーションを作成している。




そもそもなぜ白ブリーフなのか? 作者の川平さんにお話を伺った。

――パンツ作品を作り始めたきっかけは?
川平さん「大学2年の頃から作り始めました。最初はパンツがモチーフのアニメやドローイングを制作していましたが、実際のパンツに直接絵を描くようになりました。子供のころに見た怖い夢をどう表現するか考えたときに、おねしょをすることは絵を描くことと同じではないか? と思いついたんです」

――ブリーフはどこで購入するのですか?
「これまでは自分でスーパーなどに行って買っていました。でも、個展や今後の制作のために100枚くらい買うことになったので、今回はさすがにネットで買いました。だって、恥ずかしいじゃないですか! しかも、いろいろなサイズ買ってるし、変な人だと思われちゃう(笑)」



――実際に履けるのでしょうか? また、パンツを選ぶうえでのこだわりはありますか?
「絵を描く前にボンドでパンツを固めてしまうので、履くことはできません。『ひらき』のようにして乾かして、そこにアクリルやダーマトグラフ、水彩色鉛筆などで描きます。固めて描くので特にこだわりはないですが、グンゼが多いですかね」

――やっぱり「白ブリーフ」でないとダメなのでしょうか?
「トランクスではダメですね。昔はいていたということ、『おねしょ』というキーワードがありますから。トランクスに描いたら見え方も変わってくると思います」



「パンツの人」と覚えられる


――作品を見た人はどういった反応が多いでしょうか?
「『パンツだ!!』という感じですね(笑) 『川平』という名前は憶えてもらえなくても、『パンツの人』として印象に残るようです。自己紹介のときも『パンツの川平です』と言うこともあります」

――「パンツの人」で覚えられてしまっていいのですか?
「自分的には特に気にしていません。少しでも印象に残って、覚えてもらえるほうがうれしいです。それからパンツはお子さんの反応も良くて、作品に寄ってきますね」



約1メートルの巨大パンツにも注目


――見どころ、注目ポイントを教えてください。
「個展のために制作した大きなパンツです。布を買って自分で手縫いして作りました。本物のブリーフを見ながら、ここはこんなふうになっているとか、研究しながら作りました。また、初めて連作にも挑戦しました。3枚並べてストーリーを表現しています。夢の中って次から次に悪いことが起こりませんか? (笑)」




――子供の頃に見た夢で、特に印象に残っているものはありますか?
「宇宙人というか、タコのようなものがよく夢に出てきました。自分が襲われたり、街がタコに破壊されるのを傍観していたり、シチュエーションはいろいろです。今回展示した作品や、会場で流しているアニメーションにもそいつがモチーフになったキャラクターが登場します」


「もうおねしょはしてませんよ!」


――見る方へのメッセージをお願いします。
「子供のころに見た怖い夢が強く印象に残ったり、トラウマになったりしている人もいるかもしれません。しかし、大人になって思い出してみると、そこには面白さや不思議なものがあり。今はあまり怖くない。どうしてあんなに怖かったのだろうと思うかもしれない。でも、小さいころの怖かった気持ちは忘れないで欲しいです」

――今でも怖い夢を見ることはありますか?
「大人になって怖い夢や、意味不明な夢は見なくなりました。もちろん、おねしょもしませんし(笑)」



あるお客さんが「そういえば……」と昔のおねしょに関するエピソードを思い出した。自分でもすっかり忘れていたが、絵を見ながら話しているうちに記憶がよみがえったそう。


いつの間にか夜中にひとりでトイレに行けるようになり、いつの間にかおねしょもしなくなる。おねしょをしていたことすら忘れてしまった大人たちに、真夜中の怖さと不安、そしてどこか懐かしい気持ちを呼び起こさせる作品たちだった。

(篠崎夏美・イベニア)