子ども時代の癖としてはよく聞かれるが

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映画を見ていて、つい爪をガジガジ...。クセにもいろいろあるが、自分の体を傷つけるクセは早く治したい。健康な爪を取り戻すための6つのヒントを紹介する。

爪を噛むのは完璧主義の証拠?

英語で爪を噛むクセを「nail-biting」というが、この単語には、「イライラ(ハラハラ)させる」という意味もある。ストレスを感じているときや、次に何が起こるかわからない不安を抱えているとき、無意識に出てしまうのが爪を噛むクセだ。

カナダのカルガリー大学の調査によると、7〜10歳の子どものうち28〜33%、10代では45%もの男女に爪を噛むクセがあるという。子どもの「爪噛み」は、不安やストレス、緊張のサインと言われるが、多くの人は大人になるにつれて自然に治る。

しかし一方で、「いまだに治らない」と密かに悩んでいる人も少なくない。インターネット上の掲示板「Yahoo! 知恵袋」や「教えて!goo」などにも、「20代女性だが爪を噛むクセが治らず、恥ずかしくて人に手を見せられない」「気持ち悪いと言われた」「彼氏が爪を噛むのをやめさせたい」「40代の同僚が取引先の前で爪を噛む。何とかしてほしい」などという悩みが数多く寄せられている。

なぜ、爪を噛んでしまうのか? ストレスを感じているときや、なにかに没頭しているとき、手持ち無沙汰なときなどに「つい、なんとなく」という人が大半だろう。しかし、なかには強迫障害による自傷行為であるケースも。また、2015年3月に発表されたモントリオール大学の研究者らの報告によると、完璧主義の傾向が強い人には、まつ毛を抜いたり、皮膚をひっかいたりする行為のほか、爪を噛むクセが多く見られたという。こうしたケースでは、精神科を受診するなど専門家に相談し、心理的な要因を取り除く必要がある。

見た目にも衛生的にも悪影響

米国皮膚科学会は、「爪を噛むクセは体に深刻な影響を及ぼすこともある」として、クセを治すためのヒントをウェブサイトで公開している。同学会に所属する皮膚科医で、カリフォルニア大学のマーガレット・パーソン医師によると、「爪を噛む行為を繰り返していると、爪の周囲の皮膚が痛むだけでなく、組織が破壊されて爪が変形してしまう。また、口から爪へ、あるいは爪から顔や口へとバクテリアやウイルスが感染しやすくなる」と指摘する。爪を噛むクセが、見た目にも衛生的にも悪影響を与えることに間違いはない。

米国皮膚科学会が提案するヒントは以下の6つだ。

1.爪は常に短く切っておく
短いと噛みにくいので、噛みたい気持ちが起こりにくくなる

2.爪を噛むのを防止するための専用マニキュアを使う
口に入れても安全だが、苦みが口の中に残る専用マニキュアが市販されている。爪を保護する効果も期待できる。爪をテープやシール、手袋などで覆ってもよい

3.定期的にネイルケアを受ける
お金をかけてきれいにすれば、噛みたい気持ちも抑えられる。

4.爪を噛む習慣を別の習慣に置き換える
爪を噛みたくなったら、代わりにストレスボールなどを握り、手を口に近づけないようにする

5.自分のトリガー(原因)を知る
爪を噛む原因には、ささくれなどの身体的なものや、退屈、ストレス、不安など心理的なものがある。トリガーが分かれば、その状況を避ける方法が見つかるかもしれない

6.1本ずつ噛むのを止める
初めに両手の親指の爪だけは噛まないようにするなどして、それに慣れたら噛まない指を増やしていく

手元は意外と人から見られているものだ。ガタガタで変形した爪は清潔感に欠ける。また、爪を噛んでいる姿は他人に不快感を与えることもある。子どもっぽく見られ、損をすることもあるだろう。クセを治すのは難しいことだが、大人になったら「爪噛み」は卒業しよう。 [監修:山田秀和 近畿大学医学部 奈良病院皮膚科教授、近畿大学アンチエイジングセンター 副センター長]

参考論文
Nailbiting.
DOI:10.1177/000992289002901201 PMID:2276242

The impact of emotions on body-Focused repetitive behaviors: Evidence from a non-treatment-seeking sample.
DOI:10.1016 PMID:25460266

Onychophagia as a spectrum of obsessive-compulsive disorder.
DOI:10.2340/00015555-0646. PMID:19479125

(Aging Style)