「私は医者になりたかった。だが、あまり賢くなかったんだろう。だからサッカー監督になった」

自らを“ノーマル・ワン”と称したリヴァプールのユルゲン・クロップ監督は、サッカーが「とてつもなく真剣なものであるのは90分間だけ」であり、「皮肉をもってとらえるべき」ものだと話している。

「私にとって、メダルやトロフィー、勝利というのはそれほど大事じゃない。私にとって大事なのは、その瞬間瞬間なんだ。ある種の試合をしたときの思い出なんだよ。だから監督をやっている」

これは、ボルシア・ドルトムント時代の最後の1年について、モリッツ・リンケ記者が執筆した本「Reading the game」から抜粋したものだ。

「私にとってサッカーそのものはそれほど重要じゃない。だが、サッカーが私に与えてくれるものは重要だ。リーグ優勝を夢見たことはなかった。バイエルン・ミュンヘンとのチャンピオンズリーグ決勝のことも、悔いはない。トロフィーやメダルはクラブに陳列されるものだ。大事なのは、その瞬間瞬間なんだよ。そこにいたときの思い出、その試合の一員だったことの思い出だ」

クロップ監督はピッチの中のこととそれ以外のことに、明確なラインを引いているようだ。

「正直、私にとって、サッカーがとてつもなく真剣なものであるのは、試合の90分間だけなんだ。試合中の私は一種のトランス状態にある。自分の行動を理性的に説明することはできないだろう」

「それ以外のことは、取るに足らないことだ。幸いにも、私にはそれに気づくほどの賢さがあった。だからこそ、私はより皮肉的なアプローチを好むんだ。私は、クラブが自分頼みになることを望まない。サッカーにおける神のような存在をつくることは、やめるべきだ」

「医者になるのが私の夢だった。自分がサッカーを変えられると思ったことなどない。“次”を助ける一種の適性がまだあると思っている。正直、私は医者になるほど賢くなかったかもしれない。卒業したときに言われたよ。『君がサッカーの道に進むことを望んでいる。そうじゃなきゃ、何ができることか…』とね」