【インタビュー】桐谷健太「役者の世界って、最高やな」
90年代を代表する実写バイオレンスアクション「GONIN」が、最新作「GONIN サーガ」として約20年ぶりに復活! 暴力団の抗争を成長した当事者の息子たちの視点から描き、彼ら“新世代”が生き残りをかけたバトルを繰り広げる本作で、いま最も勢いにのる俳優・桐谷健太さんが大暴れ。伝説(サーガ)を受け継いだ心境や、主演の東出昌大さん、本作限りの復活を遂げた名優・根津甚八さんとの共演をふり返っていただきました。

大好きな作品の最新作。でも『プレッシャーは、一切感じない』




――以前から「GONIN」(1995年公開)のファンだったそうですね。

桐谷:劇場公開されたのが15歳の頃だったので、リアルタイムでは観ていないんですよ。観たのは18、9歳のときかな…。本当に衝撃を受けました。まず、登場人物全員がカッコいい。命をかけた男たちの執念が、内臓にグッとくるんですよ。映画としても面白さと、ある種の“怖さ”みたいなものは今でも残っていますね。

――それだけ思い入れの強い作品のシリーズ最新作に出演することになった桐谷さん。プレッシャーも相当だったのでは?

桐谷:それがプレッシャー、一切感じないんですよ。演じる役柄に集中さえできれば、プレッシャーって消えていくし、特にこの作品の場合は、プレッシャーを感じていては乗り遅れてしまう。それだけ監督を先頭に、共演者、スタッフの皆さんのいろんなパワーがグワーっと渦巻いた現場でしたね。もちろん、気合いは十分でしたよ。それに「GONIN」に出演できるという純粋な楽しみや期待感のほうが大きかったです。



――前作に引き続きメガホンをとる石井隆監督は、日本映画界が誇る鬼才ですね。率直にどんな現場でしたか?

桐谷:独特な感性はもちろん、常に頭をフル回転し、現場で臨機応変に対応する姿勢に多くのことを学ばせてもらいました。正直とてもタイトなスケジュールだったので、突然の変更を迫られることもあるんですよ。でも監督は、弱音を吐いたり、「このくらいでいいかな」って手加減は一切しない。普通なら溺れてしまう荒波を、楽しげに乗りこなしているんですよ。ひと言で表すと“柔らかさ”ですね。何より、作品を我が子のように愛する姿が印象に残っています。

名優の存在感に圧倒『役者の世界って、最高やな』




――桐谷さんが演じる大越大輔という男は、主人公・勇人(東出昌大さん)を見守りつつ、壊滅した大越組を立て直そうと奮闘する役柄ですね。

桐谷:東出くんはもともと心が優しい男の子だし、こっちが兄貴分ということで、向こうから甘えてきてくれて、ホント、可愛いなあと(笑)。ただ、年下なのに彼の方がしっかりしていました(笑)

――東出さんとの共演で、印象的なエピソードは?

桐谷:東出くんも言っているんですが、撮影が過酷すぎて、ほとんど記憶がないんですよ!体力も精神も限界まで追い込まれた分、お互いに動物的な面が出せた気がします。実際、今まで見たことがない、自分の表情が映っている瞬間があって、それだけで十分だなって。



――前作「GONIN」の主要キャストで、現在は俳優業を引退している名優・根津甚八さんが、一作限りの復帰を果たしました。共演を通して、どんなことを受け取りましたか?

桐谷:今は車いすでの生活を送っていらっしゃる根津さんが、石井監督のラブコールで現場に復帰された。それだけでも、役者魂という言葉では表現しきれない凄みを感じました。「芝居が好きだから」。根津さんにとっては、それが一番大きいんじゃないでしょうか。そんな姿を目の当たりにして、改めて「役者の世界って、最高やな」と実感しましたし、おれも芝居が大好きだから、東出くんに対しても、根津さんに対しても、他の共演者に対しても、とにかく本気でぶつかりました。同時に、役者として現場にいられる素晴らしさ、ありがたさを再確認しましたね。

“浦ちゃん”でお茶の間の人気者に!『自分自身も楽しんでいる』




――本作に加えて出演映画が相次いで公開され、テレビドラマ「天皇の料理番」や“浦ちゃん”こと浦島太郎を演じるCMも大反響を呼んでいますね。

桐谷:もともと街を歩いていても、役名で声をかけられることが多いんですよ。「あっ、チビTや!」とか(笑)。でもそれって、役者にとってはものすごく嬉しいことなんですよ。その人が観た作品の役によって俺のイメージは様々に形を変える。確かにCMの影響力はすごいなって思いますけど、自分の中でもいろんな変化が芽生えていて、しかもいい流れに向かっているので、この状況は楽しんでいますよ。



――最後に「Peachy」とは“ごきげん”“HAPPY”という意味のスラングなのですが、桐谷さんのHAPPYの源とは?

桐谷:具体的なアイテムっていうよりは、友だちや家族、それに天気とか、身の回りにあるもの全てがリンクしていて、何ひとつ欠けても自分じゃないというか…。意識しているのは、ネガティブな発想に足を引っ張られないこと。人間誰しも悩みや迷いはあると思いますが、それをいかに切り捨てて、いい時間の流れを作れるかが大切だと思いますね。今は情報が多い時代ですが、もっとシンプルに、自分の手を差し伸べられる範囲に目を向けて、明るく笑顔でいられたらいいなって。

「GONIN サーガ」は9月26日(土)TOHOシネマズ新宿他全国ロードショー。
「GONIN サーガ」公式サイト:http://gonin-saga.jp/

ヘアメイク:西岡達也(vitamins)
スタイリスト:岡井雄介

撮影:金子真紀 
取材・文:内田涼
制作・編集:iD inc.