ビールもペットボトルの時代が到来? キリンが宅配用で採用
ビールの容器といえばビンか缶だが、ついにペットボトルに入ったビールがお目見えした。三菱樹脂の「ハイバリアPETボトル」がそれ。キリンビールの会員制宅配サービス「キリンブルワリーオーナーズクラブ」用のビール容器(容量1リットル)に採用された。
三菱樹脂によると、「ハイバリアPETボトル」がビール大手のビール容器に採用されるのは初めてという。ビールもペットボトルの時代がやってくるのだろうか――。
酸素やCO2、光の遮断性が高い
清涼飲料の容器として広く利用されているペットボトルだが、これまでビールの容器として使われていなかったのは、二酸化炭素が逃げてビールの気が抜けてしまうことや、紫外線などの光に弱いためとされる。
三菱樹脂は「ビール瓶が茶色なように、ビールにとって光は大敵です。一方、ペットボトルはリサイクルの観点もあって透明にできています。『ハイバリアPETボトル』は通常のペットボトルと比べて、酸素や二酸化炭素(CO2)、光の遮断性も向上しています。今回の商品では、さらに配送時に専用パッケージを使うことで光を遮断しています」と説明する。
三菱樹脂の「ハイバリアPETボトル」は、キリンビールなどが特許を保有するダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜のコーティング技術を用いたペットボトルで、一般的なペットボトルに比べて、酸素で約10倍、炭酸ガスで約7倍、水蒸気で約5倍のバリア(遮断)性をもっている。
それによるビールの品質保持に加えて、ペットボトルは軽くて持ち運びやすいうえ、割れる心配がない。重さが軽い分だけトラックで輸送するときにかかる燃費も改善され、費用が抑えられる。さらにはリサイクルに利用しやすい、といったメリットも見込める。
キリンビールも、鮮度を保ったまま家庭に届けられるうえ、「ビンは重くて、家庭用サーバーにビールを補充するには不便です。お客様の利便性を第一に考えると、ペットボトルが適しているということになりました」と話す。
そんなニュースに、インターネットには、
「ビールはビンや缶のほうが気分はでるよね」
「えっ、ビールをペットボトルで飲むの!? なんだか、おいしいの???」
「ペットボトルのビール類がないのって、以前からずっと不思議だった。なんか目からウロコ」
「これってどうなんだろ? でも、ちょっと飲んでみたい」
「全部のビールがそうなっちゃうの!?」
と、期待と不安が入り混じった声が寄せられている。
「ペットボトル」というと、どうしても清涼飲料の形状を思い浮かべてしまい、「プッシュッ」という缶ビールを開けたときの音や、冷えた水滴のイメージが伝わりにくいのかもしれない。
「全部のビールがそうなっちゃうの?」
アルコール飲料の、ビンや缶からペットボトルへの切り替えはいまや潮流のようだ。数年前に、ワインにペットボトルが採用されたときも「ワインの味わいが損なわれる」などとペットボトルは不評だったが、最近ではすっかり定着。ワイン最大手で、キリン傘下のメルシャンのワインの一部はすでにペットボトルで、「デイリーワインを中心に、ペットボトルを使っています」という。
外見は瓶入りのワインとあまり変わらず、さわってみるとそれがペットボトルだと気づくくらいの高い品質で、こうしたワインのペットボトルも三菱樹脂の「ハイバリアPETボトル」が採用されている。
また、清酒最大手の白鶴酒造などもペットボトルを採用しはじめている。
三菱樹脂は、「技術的にはビールの容器を(ビンや缶から)ペットボトルに切り換えることは可能ですし、清涼飲料のような形状にこだわらずとも、さまざまな形状に、柔軟に対応できます」と話す。ペットボトルに入ったビールは広がっていくのだろうか――。
じつは、「ビール用PETボトル」は2004年7月にアサヒビールの商品技術開発本部・容器包装研究所が開発を発表。ペットボトルの利便性やファッション性に着目して、同社が新たなビールを発売する計画だった。
ところが、当時はペットボトルのビールが販売されることによって、「ごみが増える」「リサイクルがさらに面倒になる」「未成年にもビールが飲みやすくなってしまうのではないか?」といった反発が、主婦や環境保護団体などから殺到。結局、商品化はお蔵入りしてしまった。
そんなこともあってか、キリンビールもペットボトル容器入りの新ビールについては、「今後、慎重に検討していきたいと考えています」と話すにとどめた。
普及にはなお時間がかかるのかもしれない。