惑星協会の LightSail、通信途絶するも8日目に復活。太陽帆の展開とソフト更新を急ぐ

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5月22日、惑星協会の宇宙ヨット LightSail (LightSail-A)が地上と交信不能になるトラブルが発生しました。システムソフトウェアの欠陥が原因で、肥大化したログがメモリーを圧迫したのが原因です。

しかし5月30日になり、惑星協会は再起動なった LightSail との通信再開に成功。現在はトラブルを起こしたシステムソフトウェアの更新と太陽帆展開の準備を同時に進行しています。
 LightSail が地上と交信できなくなった原因は、システムが発するビーコンの送信ログが 32MB を超えるまでに肥大化し、処理速度が極端に低下したこと。ログの肥大化は知られていた問題でしたが、なぜか打ち上げまでに解決されていませんでした。この不具合により、地上から何度も送信されたシステム再起動コマンドもなかなか実行されず、LightSail は実質的に交信不能状態に陥りました。

システムがフリーズ状態になってしまっては、いくら再起動コマンドを送ったところで応答は期待できません。かといって技術者が現場へ出向いて電源ボタンを押すわけにも行かず、まさに八方ふさがり。惑星協会はその時点で、システムが何らかの理由で自動的に再起動することを祈るしかなくなってしまいました。

そして、通信が途絶えてから8日目となる5月30日、惑星協会は LightSail との通信再開に成功しました。LightSail がなぜ再起動できたのかは具体的にはわかりません。ただ、現時点で重要なのはこの通信可能な状態を維持し続けること。プロジェクトに協力するジョージア工科大学はシステムのアップデートパッチを準備しながら、ログのリセットのため早めの手動再起動を計画しています。
 

 
惑星協会はさらに不意のシステム停止を警戒し、本来の目的である太陽帆の展開を可能な限り早く実行できるよう準備を進めています。打上げ時の大きさわずか 10 x 10 x 30cm の LightSail が搭載する太陽帆は、展開するとその面積約32平方メートルの大きさに広がります。

ちなみに、人工衛星などが搭載するコンピュータはときどき宇宙線の照射によってメモリーや回路内の電荷量が乱れ、システムが勝手に再起動してしまうことがあります。これは地上でも起こり得る現象で、たとえば常に動作し続けるネットワーク機器などではメモリパリティエラーとして記録が残ったり、実際に再起動してしまうことがあります。惑星協会が期待をかけていたのもまさにその現象で、たまたま LightSail に強い宇宙線が降り注ぎ、システムが再起動できたのかもしれません。
 

 
なお、今回のミッションは太陽帆の展開および姿勢制御システムのテストが目的です。実際に太陽帆での推進を確認する航行テストは2016年に打ち上げる LightSail-B のミッションで計画しています。2016年の打ち上げミッションは現在、Kickstarter で出資募集キャンペーンを実施中。期間はまだ25日も残していますが、記事執筆時点ではプロジェクト開始から用意していた最終的なストレッチゴールの100万ドルに対して、あと22万ドルにまで迫る勢いを見せています。