今後も増加が予想される電気自動車にある懸念が

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 いまや自動車は生活に欠かせないアイテムだが、2005年頃より環境意識が高まったこともあり、自動車メーカーなどはエコな自動車の開発に鎬を削っている。現在、もっともエコだと言われているのが水素をエネルギー源とする水素自動車だ。

 しかし、水素自動車の研究開発はこれからで、価格も1台1000万円以上もする。ほかにも普及に向けての課題は山積しており、自動車メーカーは水素自動車の研究開発に必ずしも前向きだとは言えない。

 他方で、電気自動車の販売は右肩上がりをつづけている。

「発売されたばかりの電気自動車は、とても高価でした。だから、一般のユーザは手が出ませんでした。電気自動車はガソリン車に比べて燃費がいいのですが、それを勘案してもガソリン車の方が得という見方が強かった。なにより、一回の充電で走ることができる航続距離が短いので充電スタンドがたくさんある都心部でないと安心して走ることができない代物でした。だから、あまり普及しなかったのです」(自動車雑誌編集者)

 見向きもされなかった電気自動車への風向きが変わったのは、2009年にエコカー補助金・減税が導入されたことだった。加えて、官公庁が積極的に公用車に電気自動車を導入したこともあって電気自動車の市場は拡大。一般市民にも電気自動車が馴染みのあるものとなった。電気自動車の台数が増えたことで、同時に充電スタンドも整備された。

 電気自動車を巡る環境は年々整い、現在は街でトヨタ・プリウス、日産・リーフ、三菱・アイミーヴなどを見かけることも珍しくない。次世代自動車振興センターの統計によると、ハイブリッド車も含め電気自動車の保有台数は約300万台に達し、今後も増加することは確実だろう。

静音性が事故のリスクに

 電気自動車は環境に優しいと喧伝されるが、ほかにもガソリン車と比べて駆動音がほとんど出ないことがメリットとされている。自動車の走行音は一般的に騒音に分類されるので、「自動車の走行音が静かなんて、いいことじゃないか」と思う人も多いだろう。だが、自動車の静音性は時に事故のリスクにもなる。

「特に危険なのが、駐車場から出庫する際や住宅街などの小さな道を運転しているときです。電気自動車は静かに走るので、歩行者や自転車に乗っている人は近接しても気づきにくく、後方確認を怠った自転車がいきなり車道中央にはみ出してきたり、高齢者や子供が自動車に気づかずに物影から飛び出して事故が起きることも問題視されています」(前出・自動車雑誌編集者)

 国土交通省はこうした事態に重く見て、有識者による検討会議を設置。電気自動車ハイブリッド車の静音性による高齢者や子供たちの事故をどう防ぐか? といった検討をおこなった。

「国土交通省や警察、自治体関係者、自動車メーカーが参加した検討会議では発進時や低速運転が特に危険ということで、チャイム音やメロディを流して自動車の近接を知らせる機器の装着などが議論になりました。しかし、警報音は統一しないと意味がありません。結局、有識者会議では有効な案は出ず、現在も電気自動車の静音性による危険は課題として残ったままです」(前出・自動車雑誌編集者)

 次世代の自動車と呼ばれる電気自動車は大気汚染やエネルギー問題にも有効といわれるが、それらの導入には悩ましい問題も隠れている。

(取材・文/小川裕夫)