木曜ドラマ劇場「ヤメゴク〜ヤクザやめて頂きます〜」
4月16日(木)21時〜 TBS   初回は18分拡大

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4月16日(木)21時〜から放送開始の木曜ドラマ劇場「ヤメゴク〜ヤクザやめて頂きます〜」(TBS)はヒットメーカー堤幸彦の2年ぶりの連続テレビドラマ。
堤と組んで「ケイゾク」(99年)、「SPEC」シリーズ(10〜13年)などヒット作を生んできた植田博樹のプロデュースとあって盤石な上、脚本に、「相棒」「ATARU」などを手がけ、芸術的なまでに至高の構成力を誇る櫻井武晴が加わって、また新しい世界が誕生しそうな予感だ。

放送前に行われた第1話試写を見て、期待は高まった。

物語は、警視庁組織犯罪対策部(マル暴)で、暴力団離脱者電話相談室(通称足ぬけコール)の任務につく警察官・永光麦秋(大島優子)を中心に、個性豊かな登場人物たちが、ヤクザの足抜けに関して様々な思惑のもと行動していくというもの。

櫻井が1話の完成版を見てはじめて知ったという、自分が書いていない設定(例えば、麦秋が常に喪服を着ている。そしてその下にはズロースをはいている等)を堤が加えたことにより、いっそう人物造形が膨らんでいるということをはじめとして、足抜けする人も、させる人も、それを阻む人も、彼らと何らかの関わりをもっている人も、みんな、1回見たら忘れられない存在感だ。

最近、人物の名前と役割をテロップで丁寧に毎回紹介するドラマが多いなか、堤ドラマは見た目で誰がどういう役割を担っているかすぐ記憶できる。髪型、服装、喋り方などがこれでもかと主張しているから。嘘だと思ったら、第1話を見てみてほしい。
全身黒、月影先生かアンドレかというような大島優子、レニングラードカウボーイズのように盛りまくったリーゼントヘアの北村一輝、ちょっとオネエ入った仕草の勝地涼、ザ・ヤクザ!な風貌の遠藤憲一、ザ・看護師!な本田翼、ものすごく若作りの名取裕子・・・キャラが立ちまくっている。

組織犯罪対策部(マル暴)の暴力団離脱者相談電話室という漢字ばかりで内容がいまいちよくわからないし、暴力団とあるのですごくこわい仕事なんじゃないかと怯えていたが、たぶんこわい仕事には違いないのだろうが、楽しく見ることができた。
「むずかしいことを やさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめ なことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」(バイ井上ひさし)という感じ。

ただ、試写会で櫻井が「各話でいろいろな(ヤクザの)足抜けがありながら、全話を通して見ると、麦秋があることから足抜けしている、その伏線がわかるようになっています」(意訳)と言うのと、麦秋の相棒となる三ヶ島翔役の北村一輝が、盛りまくったリーゼントヘアにもかかわらずちょっと真面目にこんなことを語っていたのも気になる。
「『カタギの世界は理屈なんです』というバク(麦秋)の台詞はグサッときました。昔はもっと自由だったと思うのですが、今はそうでなくなってきている。そういう世の中をバクがスパ!と斬っていく。僕の役は、本質は違うのかもしれないけれど、体制に合わせて生きているほうで。でもふたりの話し合いを演じているとそのどちらの考え方もありかななんて思います。回を重ねるごとに出て来る様々な問題は、視聴者のみなさまにとっても身近な問題で、それをバクたちがどう対処していくかが楽しみです」(意訳)

なによりも、麦秋役の大島優子が、世間的イメージの明るく健康的な風貌を封印し、全身真っ黒の喪服姿で笑顔を見せないというところが最重要ポイント。
彼女はいったい何に囚われているのか。
ヤメゴクのゴクは極道のゴクかと思うが、喪服着用と聞くと、御供(ゴクウ)もかかっているのかな? と早くも深読みしたくなる。いろいろ想像を膨らませることができて、当分堤組からは足抜けできそうにない。
(木俣冬)