第一回日本翻訳大賞 【大賞】阿部賢一、篠原琢訳 パトリク・オウジェドニーク著『エウロペアナ:二〇世紀史概説』(白水社) ヒョン・ジェフン、斎藤真理子訳 パク・ミンギュ著『カステラ』(クレイン)
【読者賞】東江一紀訳 ジョン・ウィリアムズ著『ストーナー』(作品社 )

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第一回日本翻訳大賞授賞式が2015年4月19日(日)に行われる。
考えてみれば、授賞式に出席するのはふつう関係者だ。
誰もが入場できたりはしない。
だが、「日本翻訳大賞授賞式」は、翻訳や言葉に興味がある人は誰でも入場できる。
お客さんが参加できる授賞式だ。
会場は、紀伊國屋サザンシアター。
入場料は1,000円(税込・全席指定)。安い。

どうして、関係者じゃなくても参加できる授賞式がうまれたのか?

そもそものスタートは、ツイートだった。
翻訳者の西崎憲さんが、“翻訳賞はぜったい必要なように思う”とツイートし、それに、ぼく(米光一成)が「やりましょうやりましょう」的な気軽なツイートを返す。
“知りあいに声をかけて全員手弁当で”というスピリッツで「ともかくやってみますか!」ということになり、「日本翻訳大賞」が起動した。
手弁当でとはいえ、考えてみると費用があれこれかかる。
そこで、運営に関わる費用を集めるクラウドファンディングをスタートした。
100万円あればぎりぎり切り詰めてスタートできるだろうということで目標額は100万円。
で、いこうとしていたが「なかなか集まらないよ、そんなにあまくない」と経験者からアドバイスもあり、不安になる。
翻訳の賞って地味だから100万円も集まらないのでは? もっと切り詰めよう。
ということで直前に70万円を目標額に変更。しかも、募集期間を4ヶ月という長さにした。
4ヶ月あれば、いろいろな呼びかけができる。動画を作ったり、チラシを作ったり、記事を書いたり、なんとかできるだろう、と計画した。
ところが、予想は、嬉しい方向に裏切られる。
初日に目標額を突破。
ああ、支援してくれる人がいる。そのことがなんと心強いことか。
3週間のうちに約340万円を集めた。
これ以上は集める必要はないということでストップした。
募集を途中でストップすることは、いままでになかったらしくクラウドファンディング運営側は戸惑っていた。

ここで、日本翻訳賞の方向性がよりいっそう明確になった。
読者が支援し、参加して、進めていく賞だ。

1次選考は、読者の推薦をウェブ上で募集した。
推薦作とコメントを募集。
「第一回日本翻訳大賞 推薦作品リスト」としてまとめた。
これが、良質なブックガイドになっていることにも、われわれは励まされた。

また『「日本翻訳大賞」中間報告会』というイベントを開いた。
選考委員が全員そろって、「日本翻訳大賞」の進行具合を報告した。
イベントは、最終選考会の2日前!
選考会直前に、選考委員が集まって、中間報告をするなんて、珍しいことだと思うが、読者参加型が基本的な考え方になっていたので、スムーズに開催された。

そして、大賞が決定した。
【大賞】
阿部賢一、篠原琢訳 パトリク・オウジェドニーク著『エウロペアナ:二〇世紀史概説』(白水社)
ヒョン・ジェフン、斎藤真理子訳 パク・ミンギュ著『カステラ』(クレイン)
【読者賞】
東江一紀訳 ジョン・ウィリアムズ著『ストーナー』(作品社 )
『カステラ』は、読者投票であがってきた作品だ。
候補作になる前には、選考委員の5人のうち1人しか読んでなかった。
読者にその存在を教えてもらった作品ということになる。

そして、いよいよ第一回日本翻訳大賞授賞式である。
こういった経緯だから、読者・支援者にもぜひ受賞式に来てもらって参加してもらう、というのは自然な流れだ。
もちろん、この記事ではじめて「日本翻訳大賞」を知ったという人もOK。
翻訳や言葉に興味がある人であれば誰でも入場できる。
授賞式でもあるし、翻訳や言葉に関するお祭りでもある。

内容、盛りだくさん。
以下のような進行にしようと計画中である。

オープニングアクト
授賞式スタート宣言/米光一成
日本翻訳大賞ってなに?/西崎憲
大賞はこうして決まった/西崎憲・岸本佐知子・松永美穂
選考委員座談会(大賞読者賞について・翻訳とは・候補作のここがすごい)西崎憲・岸本佐知子・松永美穂・柴田元幸・金原瑞人
贈呈式・受賞者のひとこと/金原瑞人
朗読
柴田元幸さんから受賞者への質問
また来年の挨拶
サイン会

紀伊國屋書店が協力してくれるということで、会場は紀伊國屋サザンシアターになった。
「わーい!」と素直に喜んだが、大きいよ、紀伊國屋サザンシアター!
400人以上はいれる会場らしいよ。
第一回日本翻訳大賞授賞式、みんな、友達を誘って、来てください。(米光一成)
(米光一成)