28日、東証で業界初の即時決済取引導入を発表する松井証券の松井社長(撮影:常井健一)

写真拡大

インターネット専業証券大手の松井証券<8628>は28日、株の売買で取引成立時に株券と代金の受け渡しが完了する即時決済取引を業界で初めて導入すると発表した。ネット上で独自の取引市場を運営する「私設取引システム(PTS)」の設置許可を金融庁から受けた上で、来年3月にも取引所と同じ競売買方式を採用した夜間市場の形でサービスを開始する。

 通常、決済は取引成立から4日目に行われるが、同サービスでは投資家が保有する株式を売却した瞬間に手元に現金が入る仕組み。取引時間は「午後6時から午後11時59分」などを検討中で、松井証券に口座を持つ顧客であればサービスを利用できる。

 同日、東京証券取引所で行った決算発表の席上、松井道夫社長は「株が準現金化するようなもの。株取引を革命的に変える」と強調。同社が98年に行った国内初のネット取引参入以上に業界への強い影響があることを訴えた。一方、同サービスを立ち上げる人員体制や投資額、システムの概要や委託先などの詳細は明らかにしなかった。

 同社は「恐らく世界初」(同社長)となる即時決済取引の導入を1年以上前から金融庁や東京証券取引所、証券業関係者と協議。金融庁から現物取引について法的に問題ないことが認められたうえ、不公正取引を監視・規制する売買審査などの面で東証の協力が得られる方向になったことを受け、今回の発表に至ったとしている。

 ネット専業証券各社では、PTS導入を機に、既存の取引所を補完する本格的な私設取引所を目指す動きが活発化しつつある。SBIイー・トレード証券<8701>とSBI証券のSBIホールディングス<8473>グループ2社と、楽天証券は今月上旬、PTSの運営会社を共同で設立し、夜間取引所創設に向けた準備に入ると発表。同日、カブドットコム証券<8703>も単独で夜間取引所を8月に始める計画を示した。

 委託個人売買代金で業界首位のイー・トレード、2位の楽天証券など3社連合のシェアは49%。4位のマネックス証券<8698>は、すでにPTSを導入して、午後5時半から午後11時59分まで取引を行う「マネックスナイター」を運営しているため、残る3位の松井証券の動向が注目されていた。

 松井社長は、「東証と対立するような取引所を作るつもりはない」と言明し、従来通り東証に夜間取引所の開設を求めながら共存を図る考えを示した。【了】

■関連記事
松井証券社長、株主に反省の弁