歳をとったせいか、普段から日本人の言葉が萎縮(いしゅく)している、まともな日本語を使える人が少ないと一人で憤っている。テレビでニュースを聞いていても、ややもすると、若い女性アナウンサー嬢にあやしげな日本語を使う人がいたりする。

 一方ではネット社会の確立で、本当に数限りない“表現者”、“評論家”が生まれているのは、何とも皮肉な話だ。時折、ハッとするような名文に出遭ったり、その主張に「ウンウン」とうなずいていたりする自分もいる。ネットニュースでは、「PJニュース」などがそうであるように、いわゆる「市民記者」がさらに生まれる地盤ができつつあるのだろう。

 そんな折、週初めに放火容疑で捕まった長野県諏訪市のアルバイト店員、“クマエリ”こと平田恵理香容疑者(20)のニュースには興味を覚えた。彼女は自分のホームページで、日々の雑感を記していたが、自分のつけた不審火まで「ほんとに近所でビックリしたよ」などと書き込んでいたうえ、アイドル似だという自分の顔をアップしていた。実際に、一種のネットアイドルとしても評価されていたらしい。「ブログの女王」などと呼ばれる某女優さんもしかりだが、こうした文章のアマチュアの台頭で、私たちプロの生活はどう変わっていくのだろうか。

 私は本来のプロというのは“80点主義”だと思っている。つまり、どんな状況、条件の中でも「常に80点以上と評価される作品を仕上げないといけない」のが、本来の職業記者の記者たる所以(ゆえん)ということである。これは簡単そうに見えて、そう容易なことではない。

 一方、アマチュアはどうだろう。スポーツと同じで、たまにはホームランということもあるだろうし、ボーリングでいうストライクが思わず出てしまうこともある。しかし、その調子を常に維持することはそうはできないハズだ。

 言葉の重みを知ることは、その言葉と文化を大事にすることにつながる。安易に流行(はや)り言葉を使うことはないし、ましてやネット上に氾濫(はんらん)するような表現とは、一線を画した文章作法が求められていることは当然だろう。言葉と格闘する自分がそこにいないといけない。

 私たちも、狭い世界の常識に安住することは戒めなければと思う。自分たちの視点が絶対だとも思わない。しかし、プロにはプロとして要求されることが多くあるし、その経験や蓄積にはそれなりの敬意は払われてしかるべきだろう。「書きっぱなしにしない」との自覚やプロフェッショナルとしての責任感がある限りは、まだまだアマチュアには負けないハズだと信じている。【了】