By The National Guard

イカやタコは皮膚の色を変化させて周囲の環境に擬態する能力を生まれながら持っており、これを参考に科学者が周囲の環境に合わせて色が変化するシートを開発していたりするほどです。カリフォルニア大学アーバイン校のAlon Gorodetsky氏率いる研究チームでもイカに着目して新しい迷彩技術の開発が進められているのですが、ここで開発されている迷彩技術は普通のものとはひと味違ったもので、なんと赤外線カメラをだますことができる技術であるそうです。

Squid-inspired ‘invisibility stickers’ could help soldiers - YouTube

ヤリイカはさまざまな環境に完璧に溶け込むことができる生物です。



そんなヤリイカの皮膚を参考に、新しい迷彩技術の開発に取り組んでいるのがカリフォルニア大学アーバイン校のAlon Gorodetsky教授です。



新しい迷彩技術が誕生すれば、多くの兵士の命を救えるようになるかもしれないそう。



迷彩技術の研究開発はカリフォルニア大学アーバイン校の生徒と共同で行われており、研究成果は2015年3月22日から開催されているアメリカ化学会Spring 2015 National Meeting&Expoにて発表されました。



研究開発にいそしむカリフォルニア大学アーバイン校の生徒たち。





研究ではヤリイカが周囲の環境と同化する際に使用しているタンパク質を分離することに成功しており……





このタンパク質の培養に取り組んでいる模様。



培養には大腸菌も使用されているそうです。



そして、ヤリイカから抽出したタンパク質を元に作られた迷彩技術がこのビニールテープ。見た目は家庭用のビニールテープそのものですが、表面はヤリイカから抽出したタンパク質でコーティングされています。



ビニールテープは目視では通常のものとまったく見分けがつきません。



しかし、このテープは特定の色と同じ反射率を持つことが可能。



反射率については薄いコーティングの場合は青色、厚いコーティングの場合はオレンジ色といった具合に、タンパク質コーティングの厚みを変えることで調整可能となります。



また、コーティングは近赤外線も反射するので、将来的には迷彩服にこの技術を応用することで、赤外線カメラでも検知不可能な完璧な迷彩服を作り出すことも可能、とのこと。



迷彩服は目視で敵に発見される可能性は減りますが、赤外線カメラを通せば簡単に見つかってしまうという弱点を持っているので、ビニールテープが迷彩服に応用可能となればその効果は計り知れません。また、コーティングされたビニールテープは非常に安価で製造可能なので、使い捨ててもOK。



Gorodetsky教授が率いる研究チームが作り上げた光の反射率を調整可能なビニールテープには技術的な制約がほとんどなく、さまざまな種類の素材に貼り付けることが可能で、その応用範囲はかなり広くなるのではないかと見られています。ただし、Gorodetsky教授は「現在のところビニールテープを外の環境でテストする準備はできていない。しかし、その可能性には非常に興奮している」とコメントしています。

この光の反射率を調整可能な新しい技術に関する論文は既に公開されており、論文の題名は「Infrared invisibility stickers inspired by cephalopods(頭足類からインスピレーションを受けた赤外線不可視なステッカー)」となっています。

Infrared invisibility stickers inspired by cephalopods - Journal of Materials Chemistry C (RSC Publishing)



また、Gorodetsky氏率いる研究チームはアメリカ化学会にて研究成果を発表しており、その際の様子は以下のムービーから視聴可能です。

Squid-inspired ‘invisibility stickers’ could help soldiers evade infrared detection in the dark - YouTube