ユニフォームで顔を覆う大久保嘉人  (撮影/岸本勉・PICSPORT)

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コートジボワール戦の後でザッケローニ監督は「もっとアグレッシブに攻めるべきだった」と語った。日本は慎重に試合を始め、そのことについてザッケローニ監督は「スタートは良かった」と評価する。

ワールドカップ前までのザック・ジャパンを分析すると、このコメントと連動した部分が見えてくる。ザック・ジャパンの得失点を時間帯別に見ると、前半15分までと、後半15分までの30分間で全失点の約40パーセントが生まれているのだ。

ザックジャパンの得失点時間帯


だからこそコートジボワール戦は後半15分までの「魔の時間帯」を長谷部で乗り切り、そこから遠藤保仁を入れて攻撃力をアップしようとしたのだろう。

ギリシャ戦では前半でギリシャに退場者が出たこともあり、ザッケローニ監督は早めに勝負に出た。後半立ち上がりから遠藤を投入したのは相手の攻撃を食い止められるという読みが成立したからのはずだ。

守備に関して言えば、ワールドカップにおける日本代表はそれまでの弱点傾向を乗り切っている。コートジボワール戦で失点した64分、66分はそれまで一番失点が生まれなかった時間帯だ。つまり、注意すべき時間をしっかりと認識し、乗り切ることはできているのだ。

ところが攻撃は不調に陥っている。ザック・ジャパンの得点は45分以降が約60パーセントと後半勝負型。しかも全得点のうち13パーセントは85分以降に生まれるという粘りのチームのはずだった。

ところがギリシャ戦でも前半69パーセントあったボール支配率が試合全体では68パーセントに下がるなど、後半に息切れしている。また終了間際のゴールはセットプレーこそあったものの、パワープレーでは生まれていない。つまり自ら自分たちの特長を捨てているとしか思えない状況だ。

つまりこれまでの失点傾向に対策を打ってしまったが故に、自分たちの特長を阻害しているのではないかという推論が成り立つ。守備を意識しすぎてるのではないか。あるいは、自分たちが得意としているプレーを忘れているのではないか。

点を取られるものの、点を取ってきたのがザック・ジャパン。タイムアップのホイッスルが鳴るまで勝敗がわからない接戦を続けたのがこの4年間の日本代表。ギリシャ戦は2011年6月7日、チェコ戦以来の0−0の引き分けということが、ザッケローニ監督がこれまで歩いてきた道と違うところに現在いることを示している。

【取材・文/森雅史(ナタル)、撮影/岸本勉・PICSPORT】