connected-car-tesla_00

自動車用アプリのマーケットは規格が乱立し、フラグメンテーションに苦しんでいる。しかし希望がない訳ではない。

最近では「究極のドライビング・マシン」を所有したいという人が減り、「究極のアプリ・マシン」を求める人が増えてきている。私自身はホンダ Pilot とボルボ XC90 の2台を所有しているのだが、できるだけホンダを使うようにしている。ホンダはナビゲーションが優れていて、Bluetooth で自分のスマートフォンとも接続できるからだ。ボルボにはどちらも搭載されておらず、運転ができるというだけのただの自動車だ。

自動車メーカーもこのトレンドに気付いている。自動車を購入する上で、アプリの存在が決め手になるということを認識しているのだ。

「社内のテクノロジーが自動車購入時の決め手となっている」
(どちらが自動車購入の決め手となるか、1〜10の度合いでお答えください [1:自動車の運転性能 〜 10:車内のテクノロジー] )

開発者たちもこのトレンドに乗りたいと考えているが、これには大きな問題がある。VisionMobileのレポートによると、自動車用アプリのマーケットにおいて開発者は、「対象マーケットのフラグメンテーション(細分化)、アプリ流通における障害、ソフトウェアの収益化などの問題に直面している」という。

つまり、今の自動車用アプリ・マーケットは悪夢のような状態なのだ。しかし希望がない訳ではない。

「運転は任せたぞ、スマートフォン

現在、アプリを組み込む最良のアプローチは「in-vehicle infotainment (IVI)」システムを使うことだ。IVIマーケットのリーダーは、モバイルでは出遅れてしまっているブラックベリー(QNX Car)やマイクロソフト(Windows Embedded Automotive)だ。しかしこの状況はそう長くは続かないだろう。

車内テクノロジーの重要性が増していく中、最新技術の実装やアップデートには時間がかかってしまう。そこで自動車メーカーは革新を進めていくために、スマートフォンに狙いを絞り始めている。自動車はそう頻繁に買い換えないが、スマートフォンであれば2年程度で買い換えるのが普通だ。自動車用アプリの革新には、スマートフォンを活用することが理想的なのだ。フォードのデベロッパー・プログラムの責任者、ジョン・エリスは次のように説明する。

当社(Ford Motor Company)だけが、ヘッドユニットにソフトウェアを搭載しています。このヘッドユニットにはAPI(開発者向けのプログラム・インターフェース)を通じてアクセスすることが可能です。我々の考えでは、ヘッドユニット自体は単なるディスプレイ装置で、実際にヘッドユニットを制御するのはスマートフォンです。スマートフォンの革新のスピードは、ヘッドユニットの改善よりもはるかに速いのです。我々はこの仕組みに確かな自信を持っており、利用者もその効果を徐々に感じ始めています。

VisionMobile のレポートが示しているように、自動車メーカーが自動車とスマートフォンを統合するには、3つの異なる方法がある。

1. ステアリングホイールに搭載されたボタンや音声認識機能を使ってスマートフォン・アプリを操作する。
2. 1とは逆に、スマートフォンの音声認識機能(アップルの Siri や Google Now など)が IVI アプリをコントロールする。
3. 車載インフォテインメント・システムが、API を通じてスマートフォン・アプリのセカンドスクリーンとなる。極端なケースでは、スマートフォン・アプリの画面をそのままミラーリングする場合もある。

自動車とスマートフォン間の接続の標準化

もちろん、これらのいずれも、自動車とスマートフォンをシームレスに接続するための規格があることが前提だ。現在いくつかの競合する規格が存在し、その筆頭が、フォードが最近 SmartDeviceLinik としてオープンソース化した同社の AppLink である。この他に Car Connectivity Consortium(CCC)の Mirrorlink などが存在する。CCC はコンシューマー・エレクトロニクス企業(Mirrorlink はノキアを起源としている)と自動車メーカーのアライアンスだ。

上記のような、自動車業界の関係者が中心となって作り上げた構想も重要だが、アップルの CarPlay やグーグルの Open Automotive Alliance(Open Handset Alliance のモデルを参考に作られた団体)などの新たなプラットフォームも注目を集めている。しかし、こうした努力の成果は人為的に制限されてしまう可能性がある。家庭内で iOS と Android が入り混じって使われているケースも多く、自動車用アプリのプラットフォームがいずれかのスマートフォン用 OS に限定されてしまうのは問題だ。このような世帯に関しては、SmartDeviceLink のようにプラットフォームを選ばない仕組み(異なるスマートフォン OS で利用できる)が選択できると良いかもしれない。

「アプリ化された自動車」の未来像

なるべく大きなマーケットを狙いたい開発者にとって、現在、最も大きくて最良のターゲットはスマートフォンだ。いずれこれに自動車が加わることになるかもしれない。2012年には8400万台の新車が製造されたが、これらのうち「アプリ対応の」モデルはごく少数だった。ABI Researchによれば、2012年、OEM によってアプリ連携システムが搭載された自動車は800万台未満だったという。

自動車メーカーが新たなテクノロジーやアプリケーションを採用するプロセスには時間がかかる。アップルやグーグルがそれらを「飛び越えて」自動車とスマートフォンを直接連携する方法を見つけてしまう可能性も高い。これを可能にするのが On-Board Diagnostics (OBD-II)ポートだ。この OBD-II ポートは10年以上前から新車に義務付けられており、アプリ開発者はフォードやフィアットなどの自動車メーカーからの承認を得ることなく、自動車と電子機器を接続することができる。ちなみに現在 Google Play ストアには、OBD-II 対応のアプリが200以上も存在している。

さすがに OBD-II 接続では実際に自動車をコントロールすることまではできないが、開発者に対し、必要な情報へのアクセスとより多くの開発の自由を与えてくれる。これは自動車とスマートフォンの関係に革新をもたらす鍵となる、非常に大切な要因なのだ。

Matt Asay
[原文]