台湾中部の南投県で17日までに、60歳の僧侶がスーパーの店内に陳列されていたビーフジャーキーをその場で食べたり盗もうとしたために、逮捕された。台湾では「肉食をしない」などの仏教出家者の戒律が厳格に守られている。同ニュースを知った台湾人は、僧侶が商品を盗んだことよりも、「肉を食べた」ことに大きな衝撃を受けた。環球網などが報じた。

 店側はまず、売り上げ記録がないにもかかわらず、袋入りのビーフジャーキー数点がなくなっていることに気づいた。防犯カメラの映像を確認したところ、僧侶の姿をした高齢者が商品棚のそばの床に座り、人目につかないようにして食べている姿が映っていた。

 その後、同一の「僧侶姿の男」が再び来店し、前回と同じビーフジャーキーを陳列する棚にまっすぐ向かった。店側はただちに警察に通報。僧侶の荷物を調べたところ、前回食べていたのと同一のビーフジャーキーが入っていた。

 警察は同僧侶を、窃盗の容疑で逮捕した。僧侶は戒律を破ったことと盗みをしたことを謝罪した。警察の取り調べに対しては「どういうわけか分からないが最近になり、肉を食べたい気持ちがこみ上げるようになった」と話しているという。

 台湾仏教界では、出家者の「酒を飲まない」、「肉を食べない」、「殺生をしない」などの戒律が厳格に守られている。そのため、多くの人は僧侶の窃盗行為に対してではなく「盗みまでして、肉を食べた」ことに衝撃を受けたという。

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◆解説◆
 日本でも江戸時代までは、戒律を設けなかった浄土真宗が肉食や妻帯を認めていた以外は、仏教出家者は公然と妻を持つことや肉類を食べることができなかった。

 日本以外の仏教界では出家者が戒律にもとづき、肉食や妻帯をしないことが一般的だ。そのため、日本における僧侶の生活ぶりを知ると、驚くことが多いという。

 なお、仏教でも早い時期には出家者の肉食が完全に禁止されていたのではなく、肉食は好ましくないとされながらも、「わざわざ自分に供するために殺された肉と、その疑いがある肉」を食することが認められなかっただけとされる。チベット仏教では、肉食についてはかなり「大らか」な場合が多い。ただし、出家者の妻帯は認められていない。(編集担当:如月隼人)