ジョイナス中日の低迷は必然 選手達には今も落合の影 写真:YouTube

写真拡大

高木守道監督はファンのヤジにブチ切れ、チームの要である井端と口論するという内紛が起き、チームは崩壊寸前だ。常勝軍団だったはずの中日が、なぜ、このような惨状になってしまったのか?

2004年、落合博満が監督に就任すると、8年間で優勝4回、日本一1回という素晴らしい成績を収めた。それまで中日は67年間で5回しか優勝していなかったことからしても、名将中の名将と言える。
落合は現役時代から群れることを嫌い、「正しいものは正しい。間違っているものは間違っている」と常に正論を言い続け、そのぶん嫌われることも多かった。だが、三冠王3回という実績は、誰がなんと言おうとも、抗えない。落合は実力で、あらゆる雑音を封じてきたのだ。

それは監督になってからも同じだった。「マスコミに何もしゃべらない」「ファンサービスをしない」などといくら批判されても、「最大のファンサービスは勝つこと」という信念を貫き、結果を残し続けた。「優勝」という目的から全てを逆算し、そのために余計なことを話さなかったのである。
落合は「能書き垂れるな。俺の成績を超えたら、おまえらの能書きナンボでも聞いてやる」と選手にいい、猛練習を課した。その成果が、優勝4回という形になって現れたのだ。
だが、できる人ほど嫉妬とやっかみを受けるもの。日本人に嫌われる典型的なタイプである落合は2012年秋、優勝したにもかかわらず、言われのない非難を受け、解任された。
人間、8年も同じ監督の下で指導を受ければ、考え方は大きく影響される。まして、優勝4回という結果が残っている以上、影響を受けて当然だろう。

8年間のあいだに、中日の選手は"落合チルドレン"となったのである。その組織に、赴任してきたのが高木守道監督だった。昨年は、2位とAクラスを確保したが、今年は開幕から低迷を続けている。

この事態は、ある意味、必然的と言える。
昨年、高木監督と権藤博投手コーチは、投手起用の問題でたびたび意見が食い違い、『70'sバトル』と大々的に報道された。クライマックスシリーズでも投手交代でバトルし、シーズン後に権藤コーチは解任された。

投手起用について、さまざまな考え方があるのは当然で、どちらが正しいかはわからないし、チームの権限を持つのは監督であるから、自分と度々意見の食い違う コーチが解任されるのは仕方ないことかもしれない。だが、監督に積極的に意見していった権藤コーチの解任を目の当たりにした他のコーチ陣はどう思っただろうか。

ましてや、野球人気が低下し、有名選手でも引退後喰うに困っている状況だ。コーチ職を追われたら、人生路頭に迷う可能性だってある。その背景を踏まえ、「権藤コーチのように解雇されたくない」と思えば、中日コーチ陣がイエスマンになっても仕方ないだろう。
そんな意図があったかはわからないが、権藤コーチ斬りは、コーチ陣に「モノを言うな」と示すのに十分過ぎる処置だったのである。

実際、5月5日のDeNA戦の5回表には、投手・井上が6番・松本啓に1ボールを与えたところで、突如ベンチを飛び出し、交代を告げた。いつもは投手交代の際に、マウンドに向かう近藤投手コーチがベンチにいたことからも、瞬間湯沸かし的に交代を命じたと考えられる。理路整然という言葉からあまりにもかけ離れ、突然暴走する高木監督を誰も止められない状態なのだ。

現在の中日は、選手たちは一匹狼・落合博満から大きな影響を受け、コーチ陣は高木守道のイエスマンばかりが揃うという、あまりに対照的すぎるチームになってしまったのだ。
これでは、内紛が起きるのも当然だろう。