出典:「価格.com」デジタルカメラショップランキング(2010年4月28日現在)

写真拡大

■一円違うだけでも集客には差が出る

かつて大型家電の最安値を調べるには、店舗を歩いて回る必要があった。しかしいまではインターネットの価格比較サイトを使えば、全国最安の価格がすぐにわかる。価格が一目でわかれば、最安店に人気が集中するように思うが、実態はどうか。

人気ショップ「PCボンバー」を運営するアベルネットの今井浩和事業部長は、「最安値には高い宣伝効果がある」という。

「たった一円違うだけでも集客には差が出る。顧客の店選びも最安値が基準になっているはず。広告で集客を狙うよりは、相場での戦いに資本を集中させたほうが効率がいい。ただ商品価格だけではなく、送料や保証、支払い方法、それにショップの評判なども影響するだろう」

比較サイトでは、商品価格の安い順にショップが順位付けされる。まず表示されるのは送料を含まない価格だ。送料込みで並び替えられるサイトもあるが、本州以外など地域によって送料が異なる場合がある。人気商品では一円単位で順位が争われているから、送料を考慮すると順位は大きく変わる。

ネット通販では、保証への対応も重要な要素になる。現在、大手量販店の多くではメーカー保証とは別に、独自の修理保証サービスを提供している。ネット通販では対応はまちまちだ。

支払いについても注意が必要だ。2007年、最安値の常連サイト「PCサクセス」の運営会社・サクセスが自己破産した。この際、破綻直前に代金を前払いし、商品を受け取れなかった消費者が2000人ほどいたとみられる。代金引き換えやクレジットカード決済ならば安全性は高いが、後者ではショップが手数料を負担する必要があり、未対応の店舗も多い。カード未対応のPCボンバーでは、「最安値を追求すると対応は難しい」(今井氏)と説明する。

最安値に消費者が殺到しないのも、こうした事実を踏まえているからだろう。最大手「価格.com」では、各ショップのアクセス数を集計した「ショップランキング」を発表している。これを見ると、上位は「最安店」というより「有名店」だ。なかでも世界一の通販サイト「アマゾン」は、10年4月22日現在、液晶テレビ、デジタルカメラ、ゲーム機、掃除機などで一位だ。

ほかの比較サイトでもアマゾンの存在感は大きい。10年3月現在、「ベストゲート」のユニーククリック数一位もアマゾンだ。同サイトを運営するコムニカルの川崎貴志取締役は、アマゾンの強さの背景を「そこそこの安さと在庫の豊富さ」と分析する。

「利用者は未知のショップに個人情報を登録するよりも、アマゾンのような大手ショップを選ぶようだ。最安値となることは少なくとも、妥協できる程度の値付けがされている。また規模が大きいため、ひとつのサイト内でさまざまな商品を比較、検討できるのも強みだ」

規模が大きければ、そのサイト内で目的の商品と遭遇する機会が増える。長時間、回遊する人は購買意欲も高い。

では中小ショップは、どうやって大手に対抗しているのか。最安値を追求するPCボンバーは、「最安値が基本だが、加えて価格.comの『ショップ評価』を99%以上に維持するよう努力している」(今井氏)という。

ショップ評価とは、お客が注文方法、対応、納期、梱包、再利用意向の五点について、「はい」「いいえ」で投票するもの。価格以外の要素を数値化したものともいえる。川崎氏も「顧客のロイヤルティが重要」という。

「安値競争では消耗を招くだけ。商品価格だけではなく、総合的に顧客を満足させられなければ、ショップ運営は難しい」

※すべて雑誌掲載当時

(フリーライター 谷分章優=文 撮影=市来朋久、宇佐見利明、坂本道浩)