■周囲からの評価が活きてこないクローズな日本のレフリー界

――そのことを踏まえて、大西さんはスカパー!中継内でレフリー評価をしようと思ったわけですね?

大西「まず僕はプレーヤーとしてJリーグで、監督としてもJFLの中で闘ってきましたが、レフリーについては、評価をしていた経緯があります。
レフリーも恐らく試合前、スタメンの名前を見て『この選手はファウルが多い』という事前情報を得ているはずですが、選手側も当然試合前にレフリーの名前を見て評価はしているんです。さらに試合前のミーティングでは監督からも『今日のレフリーは文句言ったらカードを出すから、気を付けろ』と注意が与えられるんです。
このように監督や選手たちはいつもレフリーを評価している。それもサッカーの1つ。ところが、レフリーの皆さんは自分たちが評価されていることを理解できていない。しかも、チームや監督がレフリーを批判すると、明らかに目に見える形で処罰されるのに、レフリーのミスは目に見える形での処罰はないんですよ」

――時折、Jリーグを吹いていたレフリーがJFLとかに行っているのを見て「たぶん、ミスのペナルティなんだろうな」というものはありますけど。

大西「ですから、それを目に見える形にすればいいと思うんです。いいレフリーはいいレフリーとして評価されればいいし、ダメなレフリーは評価されなくてしかるべきです。なぜなら彼らはお金を貰ってレフリングをしているプロフェッショナルだからです。世の中が、そして日本サッカー界がレフリーの手当が手弁当だった時代から豊かになっているからこそ、そこに甘えてはいけないんです。
この20年でアジア最終予選に勝てるか、勝てないかという時代からW杯でベスト8を狙うといった風に、日本のサッカーは、そしてサッカー環境は明らかに進歩している。ということはレフリーも同時に進歩していかなくてはいけない。志を持ったレフリーが出てこないとダメです」

――現在は流通経済大学サッカー部など大学サッカー部でもレフリーの育成をするようになってきましたけど、そんな若いレフリーの卵も評価されないと伸びる要素は生まれませんからね。

大西「そうなんです。レフリーの皆さんはスカパー!中継内で、これまでは自分たちの中だけで行っていたレフリー評価について、僕を含めた元選手たちの解説者を使って、1つ1つのプレーに照らし合わせて判定をしてもらえばいいんですよ。そこで受け止めてもらえばいい。
 ただ、現状はなかなかそこがオープンになってこない。クローズな世界だという印象です。彼らからは『頑張っている』とか、『努力している』という回答は貰うんですけど」

――でも、プロフェッショナルである以上、頑張るのも、努力するのも当たり前です。

大西「そう。何をどう頑張るか、どう努力するかが大事なんです。お金を頂くんですから、誰だって頑張るんですよ。もっとレフリーが伸びていくためには、いいことはいいと言い、悪いことには悪いと言うべきです。
僕だって中継中にいいレフリングがあれば褒めます。『いやあ、よく流しました。ここを流したことによって、このプレーが生まれたんです』とか。具体的に言ってあげることが大事ですから。
でもその一方で、試合を通じて選手たちがファウルの判断基準を決める最初のファウルの取り方や、その後の基準やカードの出し方が曖昧であればすぐに指摘しますし、素晴らしいディフェンスをしてもファウルになってしまった場合は「『も、抜群のディフェンスですね』と言います。
なぜなら、そんな一定しない判断基準だと選手はストレスを抱えるし、イライラすると試合の質も落ちてしまう。レフリーが選手をイライラさせたら終わります。ルールの中でプレーの意図やファウルが悪質なのか、そうでないのかを見極めるのはレフリーの仕事であると同時に、僕ら解説者の仕事でもあるわけです。