日本のモータースポーツ人気の大黒柱ともいえるF1に、「日本GP2013年問題」が迫りつつある。

 F1の興行権を持つFOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)社と鈴鹿サーキットの開催契約期限は12年まで。つまり来年の開催は約束されているのだが、以降は未定ということ。今年、ツインリンクもてぎがインディジャパンの開催打ち切りを発表したこともあり、モータースポーツファンの間では「鈴鹿のF1も契約終了と同時に幕を閉じるのでは?」という不安の声が上がっているのだ。

 その不安を煽(あお)る懸念材料のひとつがフジテレビのF1中継。年々厳しさを増す民放各社の経営状態を考えれば、FOMのCEO(最高経営責任者)バーニー・エクレストンが要求する高額な放送権料と視聴率のバランス次第では、今後フジがF1から撤退する可能性もあながち否定できない。

「去年はNHKがバーニーと交渉したようですが、高額な放送権料で折り合いがつかなかったみたいです。今年の夏もNHKの関係者がF1視察に来ていたようですし、仮にフジが撤退し、ほかに買い手がなければ『公共放送での生中継』を期待するバーニーが、条件を下げて契約する可能性もあるかもしれません」(F1ジャーナリストの某氏)

 だが、それでもNHKがノーと言えば、日本のテレビ局でF1の中継をする局はなくなってしまう。そのとき、日本でF1を開催する意味は、はたしてあるのか?

 そして、もうひとつがメーカーゼロ、タイヤゼロ、ドライバーゼロの日本人オールフリー時代の可能性だ。現在、この3つのなかで参戦しているのはドライバーの小林可夢偉(カムイ)のみ。カムイの才能については改めて説明するまでもないが、F1の世界は「一寸先は闇」。ザウバーへの残留が決まっている来シーズンはともかく、彼がその先を切り開き、将来、表彰台争いができるようなチームに移籍するためには長い道のりが待っている。しかも現在、カムイに続く日本人ドライバーは存在しないのだ。

 もちろん、これらはあくまで最悪の可能性。こんな声もある。

「来年については確実に契約がありますし、当然、13年以降も引き続きF1を開催していきたいと考えています。なんといっても鈴鹿のF1はファンの皆さんが25年かけてつくり上げてきたイベントですから、当然、バーニーもそのコト(価値)はちゃんと理解してくれていると思いますよ」(あるモビリティランド関係者)

 最終的に日本のモータースポーツ世界遺産「鈴鹿のF1日本GP」を守れるのは、その価値をつくってきたファン自身ということになるかもしれない。

(取材/川喜田 研)

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