福島第一原発事故により放射能に汚染されたゴミの処理問題が、東日本の各自治体で深刻化している。なかでも、放射線量が高いとされる千葉県の流山市は9月29日、同市を訪れた東京電力の担当者に、市の清掃工場内にたまり続ける汚染されたゴミの焼却灰への対策を求めた。

 流山市が保管している焼却灰は、すでに約400トン以上。10月末頃には保管できる限界量に達してしまうという。保管費用はどうするのか、最終的な処分はどうするのか。東電はいまだに具体的な回答を示していない。

 しかも、これからの季節には大量の“汚染ゴミ”が発生する可能性が高い。樹木に蓄積された放射性物質が「落ち葉」となって町のあちこちにたまり始めるのだ。これまで政府は、高い線量値を示す地域でも「除染」をすれば問題ないと繰り返してきた。これに対し、秋の落ち葉と台風、そして福島を行き来するクルマなどによる「二次被曝」の危険性を説いてきた、タイ国立大学講師の小川進博士(工学、農学、気象学)は、こう語る。

「この除染という言葉も眉唾(まゆつば)物だということが明らかになりつつあります。まず、降下した放射性物質の7割が潜む東日本の山林などは現実的に除染が不可能。山の土をすべて掘り返すなど、どだい無理な話だし、さらに、高い線量の下草や腐葉土などをかき集めても、今度はそれをどこに保管するかが大問題になるのです」

 しかも、回収した落ち葉は燃やすことができないと小川博士は言う。

「落ち葉たきなどはもってのほか。放射性物質が煙の微粒子と結びついて汚染が広がります。このように、煮ても焼いても食えない上に、半減期が数十年から数百万年もある放射性物質は、とてつもなく処理が困難なのです。今、多くの自治体では一般家庭から出る落ち葉や伐採樹木の収集を中止し始めているようですが、集めても焼却できないのだから、それも当然のことでしょう。それどころか、この状況はもっと深刻化し、線量が高まった地域では、通常ならば焼却されるゴミ類まで引き取らないという事態も出てくるかもしれません。つまり、東日本のゴミ収集や清掃事業が今冬中に機能マヒする危険性が強まっているのです」

 政府や東電が具体的な対策を示さない限り、行き場のない“汚染ゴミ”が溢れ出すのは時間の問題だ。

(取材/有賀 訓)

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