■ 韓国との関係

言うまでもなく、サッカーの世界で、日本と韓国は幸か、不幸か、強い結びつきがある。韓国のサポーターは「日本にだけは絶対に負けたくない。」と思うし、日本のサポーターも「韓国に負けるとめんどくさいので、韓国にだけは負けてくれるな。」と考えている。いいライバル関係かどうかは分からないが、互いにもっとも意識する国であることは間違いない。

Jリーグにも、韓国人選手は多い。2009年シーズンから「アジア枠」が出来たこともその傾向を強めた。鹿島アントラーズはジーコ以来、外国人選手はすべてブラジル国籍の選手であったが、2009年に水戸ホーリーホックのDFパク・チュホを獲得し、2010年にはDFイ・ジョンスを獲得。サポーターに驚きを与えた。

鹿島に限らず、今は、どのチームも積極的に韓国人選手を獲得しており、J1でも、J2でも、韓国籍の選手がいないチームの方が珍しいくらいである。J1のリーグ2位になったG大阪にはFWイ・グノ、FWチョ・ジェジンという二人の元韓国代表のストライカーがいて、3位のセレッソ大阪の守護神のGKキム・ジンヒョンはアジアカップの韓国代表にも選ばれており、2010年は大分トリニータにレンタル移籍していたMFキム・ボギョンもアジアカップメンバーに入っている。

■ ノ・ジュンユンの功績 

韓国人Jリーガーの先がけといえるのが、サンフレッチェ広島のFWノ・ジュンユン。右サイドからの突破を武器に1994年サントリー・シリーズ優勝に貢献し、1994年、1998年と2度のワールドカップ出場を果たしたウインガーである。

ただ、当時、韓国国内では、有望株だった大学生のFWノが誕生したばかりのJリーグのチームに加入したことは、ショッキングなニュースとしてとらえられており、FWノ・ジュンユンをクローズアップした本のタイトルが「裏切り者と呼ばれて」というタイトルであることがすべてを象徴している。しかし、彼は明るい性格もあって、日本のサポーターにも愛された。

FWノ・ジュンユンの成功と、2002年W杯の共同開催の決定もあって、その後、DFホン・ミョンボ、FWファン・ソンホン、FWコ・ジョンウン、FWチェ・ヨンス、MFユ・サンチョルら、韓国代表の主役級の選手達もJリーグに加入するようになった。セレッソ大阪に入団したFWファン・ソンホンは1999年のJリーグの得点王になっており、韓国のレジェンドがJリーグに加入することも当たり前の出来事になってきた。

■ パク・チソンの存在

その中で異彩を放つのは2000年に京都サンガに入団したMFパク・チソンである。

当時は全くの無名であり、そのシーズンに京都はJ2に降格してしまう。しかし、フース・ヒディンク監督に見いだされて2002年のワールドカップを控えた韓国のフル代表に招集されると、2002年大会のポルトガル戦で決勝ゴールを挙げるなど、目覚ましい活躍を見せる。2003年の天皇杯決勝で、関西のクラブとしては初めてタイトルをもたらす活躍を見せて、ヨーロッパに旅立っていった。

その後、PSV、マンチェスター・ユナイテッドでの活躍は取り上げる必要もないくらいであり、J2でプレーしていたMFパク・チソンが欧州で大きな成功をおさめたことは、日本と韓国の多くの選手に希望と勇気を与えるものだった。

■ アンダー世代のJ入り?

レジェンドたちが華々しい活躍を見せる一方、この時期、その1ランクレベルが落ちる選手は日本にやってきてもなかなか成功できないことが多かった。

例えば、2003年に京都サンガに加入したMFコ・ジョンス。PSVに移籍したMFパク・チソンの後釜として破格の条件でチームに加入したが、コンディション不良もあって、チームのJ2降格の要因の1つとなってしまった。例えば、FWチェ・ソングク。2005年に柏レイソルに加入するが、チームの降格の危機を救うことは出来なかった。

しかしながら、近年、アジア枠が導入されたこともあって、もっと若い韓国のアンダー世代の選手がJリーグでプロとしてのキャリアをスタートさせるケースが非常に多くなってきている。韓国のKリーグにはドラフトがあって、自由にクラブを選ぶことが出来ないという事情もあって、J1に限らず、J2にクラブに、韓国のアンダー世代の有望株が加入してくることも珍しくなくなった。

もちろん、MFパク・チソンが大学のときに京都サンガとプロ契約し、欧州に巣立っていったという成功例があるのも大きい。象徴的なのは、アルビレックス新潟でプレーするFWチョ・ヨンチョル。今回のアジアカップではメンバー落ちしてしまったが、すでに韓国のフル代表にデビューしており、J1では11ゴールを挙げている。彼も18歳のときに横浜FCと契約して、日本でプロとしてのキャリアをスタートさせた選手である。

■ アンダー世代のJ入り?

韓国もフル代表クラスの選手は日本と同じように欧州のクラブへの入団を夢見るが、高卒や大卒の選手はステップアップの地として、日本を選ぶようになってきている。日本のクラブにとっても、名古屋グランパスに入団したFW永井謙介に代表されるように、日本のユース代表あるいは五輪代表クラスの選手を非ビッククラブが獲得するのは困難であるが、韓国人であれば同じような金額でチームに勧誘することは難しくない。

新加入する韓国人プレーヤーも、若いときの来日であるので、適応力も高くて、流ちょうな日本語を操る選手も多い。FWチョ・ヨンチョルの他にも、前述のC大阪のMFキム・ボギョン、GKキム・ジンヒョン、サガン鳥栖のMFキム・ミヌが成功例で、すでに韓国のフル代表を経験している。

日本でも、アーセナルと契約したFW宮市亮のように高校からJリーグを飛ばして欧州のクラブと契約する選手が出てきたが、韓国ではその数はくらべものにならないくらい多く、タレントが続々と国外に流出している。部外者ながら、「Kリーグの空洞化」は気になるところであるが、なぜか、この国は劣悪な環境であってもタレントが出てきてしまうので、心配する必要もないのかもしれない。

ひと一昔前、韓国代表というと、「この選手は凄いらしい。」と噂に聞く選手が揃っており、対戦するときは、「未知の恐怖」があったが、今の韓国代表はMFパク・チソンを筆頭に、よく知っている選手ばかりで時代が変わってきていることを感じさせるが、「負けられない戦い」であることは、ずっと変わらないだろう。

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