■ Jリーグアウォーズ

先日、Jリーグアウォーズが開かれて、MVP、ベストイレブン、ベストヤングプレーヤー賞、最優秀主審賞等が発表された。MVPは大方の予想通り、名古屋グランパスのGK楢崎正剛が選ばれて、Jリーグ史上初のゴールキーパーの受賞となった。また、ベストヤングプレーヤー賞はガンバ大阪のMF宇佐美貴史。これまた順当に選ばれた。ベストイレブンは名古屋から、GK楢崎、DF闘莉王、DF増川、MFダニルソン、FWケネディと5人選ばれた。

ということで、独走でJ1を制した名古屋グランパスが目立ったアウォーズであったが、1点、気になったのは、最優秀監督賞についてである。

今シーズンは、名古屋グランパスのストイコビッチ監督が選ばれた。就任3年目にして、名古屋を初のリーグ制覇に導いた手腕が評価されたと思うが、「最優秀監督」かというと、必ずしも、そうとは言えない気はする。ストイコビッチ監督のマネージメント力は素晴らしかったが、今シーズンに限っていうと、ストイコビッチ監督よりも優れた力を示した監督が、他に何人か、いたように思う。

■ 最優秀監督候補?

最初に名前を挙げたいのは、アルビレックス新潟の黒崎久志監督。開幕前は、GK北野、DF千代反田、DFジウトン、MF松下ら主力を失ったこともあって、「降格候補の1つ」に挙げられていて、黒崎氏も監督としては初挑戦ということで不安視されていたが、予想を裏切る9位という好成績でシーズンを終えた。MFマルシオ・リシャルデスに率いられたチームは、ホームでは滅法強くて、名古屋、鹿島、清水、川崎F、横浜FMといった上位チームをホームで下している。

主力流出の穴を埋めるべく、GK東口、DF西、MF三門、FW曹永哲といった若手をレギュラーに抜擢し育て上げたことや、前任者の鈴木監督のサッカーのベースを崩すことなく発展させていった点など、チーム作りも見事で、見どころの多いチームを作ったことも特筆すべきである。

■ 最優秀監督候補?

次に、名前を挙げたいのは、セレッソ大阪のレヴィー・クルピ監督。昇格1年目のチームをいきなり3位に導いて、ACL出場権を獲得した。17勝7敗10分けで得失点差「+26」はリーグ最多。シーズン途中にMF香川真司が抜けた穴を感じさせなかった。

クルピ監督は2007年の途中にC大阪の監督に復帰。4年目のシーズンであったが、過去の3シーズンは試合中の動きが遅いことや、固定メンバーで戦う頑固さ故の弊害もあって、ブラジル人監督によく見られる「アバウトさ」も垣間見えたが、今シーズンは采配も冴えていて、試合中に選手交代で流れをガラッと変えてしまうこともあった。若手の抜擢も見事で、ユース出身で2年目のDF丸橋祐介は日本代表候補を狙える位置まで飛躍した。誰も予想しなかった昇格チームを3位に導いたことは高く評価できる。

■ 最優秀監督候補?

3人目は、モンテディオ山形の小林伸二監督。2008年のJ2で2位になって初の昇格を決めたが、その時、2年連続で山形がJ1で残留を果たす予想した人は皆無だった。34試合で29得点とリーグ最少であるが、11勝14敗9分けで13位。危なげなく残留を果たした。

そのサッカーは決してスペクタクルなものではなかったが、山形という風土にあったサッカーであり、モンテディオというチームのカラーを生み出しつつ、「残留」を果たした点は見事であった。自分のチームことをよく分かっている監督であり、若い指導者のお手本になる存在である。

■ 最優秀監督候補?

もちろん、ストイコビッチ監督が、今シーズン、素晴らしい仕事を成し遂げたことを否定することはできない。

開幕前、DF闘莉王、FW金崎ら代表選手を獲得。これだけのタレントを集めて、DF三都主やMF小川ら実績のある選手がサブに回ることが多くなったが、不協和音というものはほとんど聞こえてこず、DF闘莉王という扱いにくキャラクターの選手をうまくチームに融合させて力を発揮させた。11位以下の8チームに対しては15勝1敗。取りこぼしがほとんどなかった。FWケネディという絶対的な高さを誇る選手を軸に、手堅く勝ち点を稼いでいった安定感は見事であった。

ただ、インパクトとしては3位に入った2008年シーズンよりは劣ってしまう。大型補強を行って優勝候補と呼ばれた優勝未経験チームをチャンピオンに導くことは容易なことではないが、難易度としては新潟で9位になることや、C大阪で3位になることの方が、より難しいものであったように思う。(ストイコビッチ監督は2008年シーズンに「最優秀監督賞」を受賞すべきだったと思う。)

■ 最優秀監督か?優勝監督か?

ここ最近、ずっと、年間チャンピオンのチームの監督が最優秀監督賞を受賞してきた。両者が一致しなかったのは、2001年シーズンの鈴木政一監督が最後であり、それ以後、2002年の鈴木監督から2010年のストイコビッチ監督までずっと両者がイコールになっている。

ただ、2000年までは一致しないことが多かった。年間王者のチームから最優秀監督が選ばれたのは、1993年と1994年に連続で受賞したヴェルディ川崎の松木安太郎氏のみであり、1995年のアーセン・ベンゲル氏から2000年の西野氏まで全て優勝チーム以外から最優秀監督が生まれている。

優勝監督を自動的に選出するのであれば、賞の名前を「優勝監督賞」に戻した方がベターであり、「最優秀監督」のままであるならば、今シーズンに限らず、もっと柔軟に選考した方がいいのでは?と思う。

※ 1995年以降は、最優秀監督賞と優勝監督賞を別に表彰していたが、2004年以降は最優秀監督賞だけとなった経緯もある。

■ J2の受賞は?

ところで、アウォーズにはJ2の選手も参加していたが、J2はほとんど蚊帳の外であり、表彰を受けたのはJ2優勝チームの柏くらいで、MVPやベストイレブン、最優秀監督賞といったものはJ2には存在しない。

何か理由があるのかもしれないが、J2もJ1と同じように表彰を行ってもいいのではないだろうか?表彰されてマイナスになることは何もなくて、J2リーグであっても、ベストイレブンだったり、ベストヤングプレーヤー賞を受賞した選手はメディアも扱いやすくなるし、知名度アップにもつながってくる。

最後に、同じ感じで、J2の今シーズンの最優秀監督賞を考えてみると、柏のネルシーニョ監督、福岡の篠田監督、熊本の高木琢也監督、栃木の松田浩監督、愛媛のバルバリッチ監督らの名前が浮かんでくるが、個人的には東京ヴェルディの川勝良一監督を推したい。シーズン前に主力が流出しながら、高木兄弟ら若手を育て上げて5位と大健闘した。ある程度の戦力が維持できれば、来シーズンの昇格候補の1つである。


ドラガン・ストイコビッチ (どらがん・すといこびっち)

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