オランダのアムステルダムに本部を置く環境保護団体、グリーンピースがこのほど「川に潜む毒、長江の魚の体内有毒・有害物質の調査」と題するリポートを発表した。長江(揚子江)の上・中・下流で捕獲したコイやナマズからいずれも、環境ホルモンが検出された。食用すれば「性早熟」を引き起こす恐れがあるという。中国では各メディアが同リポートを紹介、リポートは今さらながら、社会に衝撃を与えた。チャイナネットが報じた。

 重慶、武漢(湖北省)、南京(江蘇省)、馬鞍山(安徽省)の各市で捕獲した長江の野生のコイとナマズの筋肉や内臓に含まれる物質を調べた。いずれも内分泌攪乱物質(ないぶんぴつ・かくらんぶっしつ)、いわゆる環境ホルモンのノニルフェノールとオクチルフェノール、パーフルオロオクタンスルホン酸塩を検出した。

 重金属では、すべての検体の筋肉と、重慶で採取したコイの肝臓以外から水銀を検出、すべてのナマズからカドミウムを検出した。馬鞍山で採取したナマズの一部で、肝臓から鉛を検出した。

 内分泌攪乱物質は、生物の体内でホルモンと同様の働きをする物質。特に性ホルモンとの関連で、女性の性早熟、男性の精子数減少をもたらすとの見方がある。ノニルフェノールはゴム用老化防止剤の原料、オクチルフェノールは油溶性フェノール樹脂や界面活性剤の原料など、産業界で広く使われている物質が多い。

 人体を含めて生物への影響が完全には分かっていない場合も多く「あくまでも、疑い」、「動物実験で確認されても、人体への影響が分かったわけではない」との主張もあるが、環境汚染を深刻視する専門家からは、「科学的に厳密に証明されていないだけ。状況証拠を考えれば、多くの生物が影響を受けていることは明らか」、「人間以外の動物に影響があれば、人体には無害と考える方が、むしろ不自然」などの反論がある。

 グリーンピースによると、検体として使った魚は、2010年1−3月に、重慶・武漢・馬鞍山・南京で、一般漁民が捕獲した新鮮な魚を入手した。冷凍・遮光した上で、英国のエクセター大学に持ち込み、分析した。

 内陸水系の深刻な汚染は、中国当局もこれまで発表してきたが、国外の団体が、市販されている魚の分析結果を発表したことで、中国社会は改めて衝撃を受けた格好だ。(編集担当:如月隼人)



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