韓国核安全技術院は同国北部の江原道で14日、大気中の放射性キセノンの濃度が平時の8倍になったことを明らかにした。北朝鮮が5月12日に「独自の核融合技術を開発した」と表明した直後で、同国が水素爆弾開発のための小規模な核実験をした可能性があるという。環球網など中国メディアが21日に報じた。

 キセノンには、化学的性質は同じだが質量がわずかに異なる「同位体」が多種存在する。うちいくつかは核分裂反応によって生成するため、核実験の「証拠の指標」として用いられる。水素爆弾は核融合を瞬時に発生させて大きなエネルギーを引き出す兵器で、核分裂による原子爆弾を「起爆装置」として利用する。そのため、北朝鮮が水素爆弾を開発するための基礎的実験としての核分裂実験を行った可能性があるという。

 韓国当局は2006年にも、北朝鮮が核実験を行ったと宣言した数日後に、大気中の放射性キセノン濃度が数倍に上昇したことを観測した。ただし、今回の「濃度上昇」は北朝鮮の「核融合技術開発」の直後であっただけで、北朝鮮が水爆を開発している確証が得られたわけではない。韓国政府関係者からは「放射性キセノンは、(通常の核分裂型の)原子力発電所から放出された可能性もある」との見方も出たという。

 北朝鮮の労働新聞は5月12日付で、「わが国の研究者は、核融合技術で自ら誇れる成果をあげた。新エネルギーの開発で突破口である」との記事を掲載した。核融合のエネルギーを持続して安定的に取り出す「平和利用の技術」であるような書きぶりだが、核融合を平和利用するには超高温・超高圧を一定時間持続させねばならず、実用化に成功した国はない。北朝鮮の技術力で実現するのは「常識に考えて不可能」とされる。

 水素爆弾は、核融合の平和利用に比べれば技術面の要求が低く、米国、旧ソ連(現・ロシア)、英国、フランス、中国が開発に成功した。(編集担当:如月隼人)



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