■ 国内ラストマッチ

南アフリカワールドカップまで18日。国内最後のテストマッチは韓国戦。日本はGK楢崎。DF長友、中澤、阿部、今野。MF遠藤、長谷部、中村俊、本田圭、大久保。FW岡崎。試合前にコンディション不良を訴えたDF闘莉王は欠場し、DF阿部がセンターバック。DF長友が右サイドバック、DF今野が左サイドバックに入る。

東アジア選手権で日本に3対1で勝利した韓国は、DFカク・テヒ、DF李正秀、FWイ・グノらがスタメン出場。大分トリニータのMFキム・ボギョンはベンチスタート。

■ 朴智星の先制ゴール

試合は開始早々に韓国がFW朴智星が中央を突破してミドルシュート。これがコースを突いてネットに突き刺さる。韓国が先制する。前半は1対0の韓国リードで終了。

後半になると、日本はFW森本、MF中村憲、DF駒野、FW矢野らを投入し同点を狙うが、試合終了間際にPKを取られて万事休す。結局、0対2で敗戦し、韓国戦は2連敗となった。

■ 順当な敗戦

試合前にDF闘莉王が不調を訴えて欠場し、DF阿部が急遽、センターバックで起用されるというアクシデントもあったが、チームが落ち着かないままにFW朴智星にゴールを決められた。1点ビハインドになって、後半にブレーキ役のMF中村俊を下げてFW森本を入れた辺りから少し持ち直したが、ゴールは遠かった。

日本はMF中村俊とMF本田圭をダブルでスタメンに起用したが、やはり持ち味をつぶしあって、双方がいいところなく後半にピッチを去った。これまでも何度か同時にスタメンで起用してきたが、韓国よりもさらに強いカメルーンやオランダ、デンマーク相手で上手くいくとは思えない。

■ なぜ、出来なくなったのか?

不思議なのは、昨年の秋ごろに出来ていたサッカーが、今年になって全く出来なくなったことである。メンバーは大きく変わっておらず、監督も変わっておらず、しかし、やっているサッカーの質は極端に落ちてしまった。セルビア戦の不出来は、メンバー選考前のプレッシャーが要因だと考えられたが、23人のメンバーも決まって落ち着いている中で、これだけのパフォーマンスしか見せられなかったら、失望するしかない。

今年の代表は1月初めにイエメン戦があって、キャンプ真っただ中の2月に東アジア選手権がある、という厳しいスケジュールになったが、正直、大事なのはワールドカップ本大会であり、東アジア選手権は結果も内容も無視しても良かったのかもしれないが、中国に引き分け、韓国に敗戦という結果で無用なプレッシャーがかかって、岡田監督は負のスパイラルに入ってしまった。

ここから3週間弱で立て直すのは、どんな名監督であっても難しいだろう。

■ 左サイド大久保

攻撃のポジションの選手はほとんどが不出来だったが、唯一、及第点以上だったのが左サイドハーフに入ったMF大久保。MF松井が怪我ということもあってスタメン出場し、前でボールを持ったら、積極的に仕掛けていった。前半には惜しいミドルシュートもあって、久々に代表のピッチで光るプレーを見せた。

MF本田圭、MF中村俊、MF大久保と並んだ「重たい中盤」の中でコンビネーションはほとんど見られなかったが、23人枠に入った選手の中では、唯一と言っていいくらいドリブルで仕掛けてシュートを狙うことの出来る選手である。ここまでは代表で輝くプレーを見せられていないが、汚名返上のチャンスは残っている。

■ 右サイドバックの長友

MF大久保以外では、DF長友とDF中澤は及第点以上の出来だった。特に、DF長友は代表では不慣れな右サイドバックに入ったが、相変わらずの運動量とタフさでサイドの戦いを制した。

DF内田、DF駒野、DF長友の3人がサイドバックの本職であるが、DF長友は左サイドバックのスタメンとみられていた。しかし、この日は右サイドバックでプレー。もともと右利きであるので違和感はなく、DF駒野も両サイドバックをこなせるので、相手によって左右を入れ替えるということも可能となる。DF長友の右サイドでの起用に目処がついたことは、数少ない収穫といえる。

■ 岡崎の1トップ

FW岡崎は日本の得点源であるが、やはり世界レベルの相手では1トップとしては厳しい。器用な選手ではないので、ボールをうまく受けて捌くことは出来ず、高さもないので後方からのロングボールというオプションが無くなってしまう。これは劣勢が予想される日本にとっては致命的である。

これまでも試しているように、FW岡崎をうまく生かそうとするならば、サイドハーフでの起用がベターだろう。左サイドはMF大久保が好プレーを見せたのでとりあえずMF大久保として問題ないが、トップ下と右サイドハーフはレギュラーが決まっていない。左サイドハーフの方がいいのかもしれないが、右サイドハーフでも面白いだろう。献身的な守備とゴール前への飛び込みを期待するなら、サイドハーフで起用すべきだろう。

■ キム・ボギョン

一方の韓国はJリーガーが何人も出場していたが、その中で途中出場したのが大分トリニータのMFキム・ボギョン。今シーズン、セレッソ大阪に加入したが、外国人枠の関係で大分にレンタルされているが、J2で開幕5試合で6ゴール。その後は、勢いは止まってしまったが、現役の韓国代表の実力を見せつけている。

過去、若年層の韓国代表選手は多く来日しているが、意外と苦戦していて、FWチェ・ヨンスやDFホン・ミョンボ、FWファン・ソンホン、MFユ・サンチョルといったバリバリのA代表クラスでレジェンドクラスでないと、環境の異なるJリーグで華々しい活躍を見せるのは難しい、ということが1つの定説になりつつあったが、MFキム・ボギョンの活躍はその説を打ち破るものである。

左利きで「動ける中村俊輔」という評価もあるが、大分でのプレーを見る限り、強烈な左足とインテリジェンス溢れるプレーは、横浜フリューゲルスに所属していた頃の元ブラジル代表のMFジーニョを思い起こさせる。

■ グッドバイ・中村俊輔

この試合のMF中村俊のプレーは散々だった。運動量は少なく、ひらめきもなく、チームを引っ張る意欲もなく、これだけ輝きを失ってしまったMF中村俊を代表のピッチで見るのは切ないものがある。韓国とは違って日本は23人枠が決定しているが、もし、今から、30人から23人に絞るのであれば、MF中村俊は落選しても全く不思議ではない。

1998年のカズを巡るトラウマがあるのか、岡田監督はMF中村俊を中心で起用し続けてきたが、もう限界が来ている。MF本田圭を中心にチームを作るのであれば、MF中村俊がベンチが妥当であるし、これだけ戦うことの出来ない選手がピッチ上にいると、チームは機能しない。DF長友の半分でもいいので、戦う姿勢を見せてほしかった。

後半18分にMF中村俊とFW森本が交代となったが、アンタッチャブルな存在として扱っていた岡田監督にしては珍しい采配だった。本大会で背番号「10」を岡田監督はどう扱うのか?1996年の秋。ワールドユースのアジア予選のとき、初めて日の丸を付けてプレーするMF中村俊輔を見て衝撃を受けてから14年。もしかしたら、この日が日本代表でのラストゲームだったのかもしれない。日本代表で見せた素晴らしいプレーの数々、いつまでも忘れない。


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