今回の【ドラマの女王】は『ハンチョウ〜神南署安積班〜』(TBS系)。『相棒』(テレビ朝日系)ののヒットにより、ただ熱いばかりでなく落ち着いた大人の雰囲気の刑事に人気が高まっている。そしてそんな刑事が“パナソニック水戸黄門枠”の水戸黄門と水戸黄門の間を埋めるドラマの中に登場した。さておじいちゃん、おばあちゃんは見てくれるかな?


東京・原宿に新設された小さな警察署「神南警察署」がドラマの舞台。安積剛志(佐々木蔵之介)を班長とする「安積班」に属する6人の刑事たちが様々な事件を解決してゆく人情刑事ドラマ。ストーリーは一話完結。『ナショナル劇場』から『パナソニック ドラマシアター』に枠タイトルが変更されてから初の現代劇で、ナショナル劇場時代を含めてTBS月曜8時枠で刑事ドラマが放送されるのは『特命!刑事どん亀』(2006年)以来3年ぶりである。

部下がわずか5人しかいない弱小部署の責任者とあるが、一般人にはそれが少ないのかどうかよく分からない。イケメン刑事・村雨(中村俊介)と、鑑識課出身の異色の女性刑事・水野(黒谷友香)はともかくとして、『キイナ〜』同様、相変わらず松葉杖の塚地武雅や、『だんだん』山口翔悟、その他、賀集利樹や田山涼成、鈴木拓、渋谷飛鳥、安めぐみ、近野成美、奥貫薫と出演者の多さは『トライアングル』並み。小脇に抱えたヘルメットが「電気がま」にしか見えない家電俳優、細川茂樹まで白バイの役で出て来る。

さすが放っておいても一定の視聴率がとれる“パナ枠”=“水戸黄門枠”。ムダムダしくキャストが増やせるくらい予算があるのね。しかし、月曜8時TBSにチャンネルを合わせる人の多くは「時代劇好き」のお年寄りであり、そして演目は徹底的に『水戸黄門』が求められる。たとえ、元“助さん”が黄門様になってイメージが違かろうと、磯山さやかが孫にしか見えなくても、由美かおるのお風呂と、印籠と、風車の弥七が見れればそれでいいのである。
これは、同じTBS系の『渡鬼』に対するテレビ朝日系の『只野仁』の勝てない現象に似た現象で、いくら『ハンチョウ』の面々が人情捜査をしようと、ゲストの市原悦子が『家政婦は見た』のキャラそのままに“騒音おばさん”を演じようと、この枠の『水戸黄門』以外のドラマは、『水戸黄門』の代用品でしかないのである。
多くの年配者は、『水戸黄門』がやってないから『ハンチョウ』を見る。そんな『ハンチョウ』に複雑なストーリーはいらない。

分かりやすい悪人(老人を突き飛ばすなど。)が出てきて、人情刑事が老人を助け悪人を懲らしめる。その短い1時間の間に刑事の“人となり”(やもめの刑事に年頃の娘が世話を焼いてどうのこうの・・・。)を盛り込んで、そうそう、ちょっとイイ女のいる飲み屋で一杯やるシーンも忘れてはならない。ややや!この設定はどこかで?

まさに『はぐれ刑事純情派』ではないか・・・。

分かったぞ!『水戸黄門』を楽しみにしている年配者の“もう一つのお楽しみ番組”、藤田まこと主演のロングセラー『はぐれ刑事純情派』。TBSはこの流れを月曜8時に持ってこようとしている。そういえば、『ハンチョウ』の主人公の安積はバツイチのやもめ暮らしで、年齢のわりには成人した娘がいる。いまいち乗り切れないが妙な“人情味”を醸し出し、ケイン・コスギのかわりに山口翔悟も出てくる。そしてしなぶれた眞野あずさのかわりにここのところ油の乗った奥貫薫が小料理屋の女将役で登場。そして第一回のゲストは『家政婦は見た』の市原悦子。もう、ギンギンにテレビ朝日を意識している。このジャンルでは今後もきっと、テレビ朝日とTBSはバトルしていくに違いない。

NHKとTBSとテレビ朝日が強くて、日本テレビとフジテレビが弱い、“年配者向け”の人気ドラマ。その熾烈な争いの中でこんなパクリが広げられていたのか。月曜8時というオイシイ枠の裏で『和風総本家』なんて知識番組やっているテレビ東京も、いっそのこと時代劇つくって裏でぶつけてやればいいのに。

(編集部:クリスタルたまき)

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