フランスのユーロ2008グループリーグ敗退を受けて、フランス最大のスポーツ紙「レキップ」が敗因を分析し、ドメネク監督の責任を厳しく追及している。

 最大の謎は、監督が行なった人選だ。23人の中でシーズンを通じて好調だった選手は、リベリ(バイエルン)、エブラ(マンチェスター・ユナイテッド)、トゥララン、ベンゼマ(リヨン)のみ。サニョール(バイエルン)とクペ(リヨン)、ヴィエラ(インテル)はシーズンの大半をケガで棒に振り、アンリ、アビダル、テュラムはバルセロナで、マルダ、アネルカはチェルシーで不振にあえいだ。

 ドメネク監督は“総括”の記者会見で「今回のユーロは、2年後のW杯に向けた準備だった」と弁明しているが、記者団から「ならば、なぜベテランを多く起用したのか」と矛盾を指摘されている。

 監督は、体調が万全でなく疲れの見えたベテランにこだわって、メクセス(ローマ)、フラミニ、サーニャ(アーセナル)といった調子のよかった中堅、若手の選手を外したために、選手起用の選択肢を自ら狭めてしまった。イタリア戦でセンターバックのテュラムに代えてサイドバックのアビダルを起用したのがその顕著な例だ。そのアビダルがPKを与え、レッドカードで退場という大失態を演じたのだ。

 ケガが回復せず、ついに1試合も出場できなかったヴィエラを帯同した理由について、ドメネク監督は「チームにとって精神的に重要な存在」と説明したが、そのヴィエラがエブラと衝突し、チーム内の緊張を増幅させたのは皮肉な結果だ。

 また、今大会で抜擢したゴミス(サンテティエンヌ)がまだ国際レベルに達していないことが露呈したのは、“トレゼゲ外し”に対する疑問を再燃させることになった。監督はゴミスの起用を「ポストプレーヤーとして使うため」と説明したが、ならばトレゼゲこそ最適の人材ではなかったか、という指摘だ。

 このようにドメネク監督を批判する材料は数々あるが、本人は「失敗でなく失望」と責任を回避し、敗因は「コミュニケーションのミス」と空疎な説明を繰り返している。レキップ紙は、02年W杯の敗戦後のように緊急会議が招集されることなく、監督の進退が決まるまでに2週間の猶予が与えられたことで、ドメネク監督は少なくとも時間稼ぎに成功したと見ている。協会内の“政治”に強いとされるドメネク監督だけに、この“冷却期間”が続投に幸いしないとも限らない。なお、民放のM6局とル・パリジャン紙がインターネット上で行なったアンケートによると、デシャン氏を監督にすべき、とする意見は60%にのぼった。