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 ハノイに着てから、2週間が過ぎた。ここ数日は、暑さも幾分和らいでいる。体がここの暑さに慣れたわけではなく、実際気温も5度くらい低いようだ。湿度は相変わらず60%を超えているが、吹き出す汗をぬぐう回数も減っている。開催4カ国中最も高温多湿のハノイで、試合を重ねて日本にとってもアドバンテージは、オーストラリア相手に有効に働くのだろうか?そんなことを考えながら、キックオフを待った。

 日本代表はオーストラリアの破壊力を封じ込めることに成功したといえる。「アジアカップは特殊な気候の中でやるから、特別な大会。今日の内容がそのまま力を映すわけじゃない。参考にははらないというかね……」と120分の激闘後、PK戦で勝利したのち、中村(俊)はそう語った。それでも自身が守備のために走り回った感触を「達成感がある」と表現している。

 中村(俊)はもちろん、すべての選手が良く走り、そして体を張った。しかし、大きなリベンジを成し遂げたという思いは選手たちにはないのかもしれない。「オーストラリアとはこれからも当たる可能性がある相手。いつまでも負けてはいられない」と高原。「今日は厳しい試合になるとは思っていたし、大きな山場だとは感じて試合に挑んだけれど、終わってみると、アジアカップのひとつの試合というだけです。ひとつの山は越えたのかもしれないが、山はまだこれからある。今日の試合の経験がチームに何をもたらすかは、これからの自分たちにかかっている」と鈴木は疲労感を漂わせながら、そう語った。

 92年の広島大会で優勝して以降、96年大会では敗退したが、00年、04年と2連覇を達成している日本は、アジアカップ4大会で1試合しか負けていない。「勝つために僕らはここに来ている。当然優勝も目標ではあるけれど、そこにいたるまでの間に、チームが成長すること、進化することが大事」と高原は話す。

「もっと気温が低くて、俺らもオーストラリアもお互い動けて、もっと元気な状態で対戦したときでも、日本はボールも人も動くようにしていかないといけない。そのためにはもっと判断を速くすること。今日は暑いから、相手からレッシャーもこなかったからね。しなくちゃいけない。向こうよりも動いて、質でも勝って、パス廻しでも勝って、あとはポリ(バレント)だね。そうじゃないと、相手に捕まってしまうからね」中村俊は、楽しそうにそう話した。日本の進化の可能性を感じている、そんな笑顔だった。

―― text by Noriko TERANO from Vietnam ――

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