滴草由実

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 昨年3月に発表した3作目のアルバム「花Kagari」では、様々な世界観の楽曲をその高い歌唱力で個性豊かに表現し、ヴォーカリストとしての存在感を見せつけた滴草由実。5月30日には前作「君の涙を無駄にしたくない」から1年3ヶ月ぶりとなる、8作目のシングル「I still believe〜ため息〜」を発表。同曲では、doaの徳永暁人が作編曲を手掛けた心に染み入るメロディを、滴草が吐息交じりの繊細な歌声で奏で、切ない感情の揺れが静かに描かれている。

――滴草さんが歌手を目指されたのは、いつ頃ですか?

滴草由実(以降、滴草):小さい時から歌が好きで、小学校の時から合唱団に入っていたんですけど、鹿児島の田舎の方だったので、最初は憧れ的なものだったんですよ。それで中学校くらいの時に、友達に誘われてオーディションを受けたら、いい感じに進んでいく内に、ダメもとで夢が破れてもいいから後悔しないように、行ける所まで行ってみようと決意して。自分自身、歌が必要だということに気が付いたので、そこから目指していました。

――その時は、どんなアーティストになりたいと思ってましたか?

滴草:その時は結構、個性的なアーティストが好きで。お姉ちゃんとお兄ちゃんの影響で、洋楽を聴くことが多かったですね。黙ってこっそり借りて聴いたり(笑)。お兄ちゃんにローリン・ヒルの「MISEDUCATION」のアルバムをもらったんですよ。その時は全然知らなかったんですけど、聴いてからはもう身も心も鳥肌が立って。中2ぐらいでしたけど、「この音楽でやっていきたい!」と思って。ローリン・ヒルには生き方、プライド、カッコ良さ、声、グルーヴ感にも個性があったので、「これだ!」と思って。

――滴草さんは英語の発音が綺麗ですけど、何か理由は?

滴草:よく耳コピして、歌詞が分からないけど歌ったり。英語は好きで、英語弁論大会に出たりもしました。

――ボイストレーニングなど、レッスンをされた時期はありましたか?

滴草:鹿児島にいた時は全然。歌手を目指してからは、歌が上手くなりたいと思って、毎日歌ってましたね。

――鹿児島を出たのはいつ頃ですか?

滴草:17歳です。高校2年が終わってすぐ大阪に行って。

――大阪から東京に来られたのは?

滴草:2年前ですね。

――デビューから4年が経とうとしていますが、何か変わってきたと感じていることはありますか?

滴草:去年くらいから、変わることってすごく大切なことなんだなと実感して。歌にしても、自分の求めるものよりも、聴いてくれる人達が求めるものをすごく考えるようになったし、そういう歌を歌いたいなという心の変化があって。なので、今回のシングルは特に言葉が伝わるような曲を選んだし、作詞の時もすごくこだわって書きました。

――「I still believe〜ため息〜」はdoaの徳永さんが作曲・編曲を担当されてますが、曲が最初にあって、後から歌詞をつけたんですか?

滴草:大体そうなんですけど、今回は普段自分が考えていたり、思っていた言葉が元になっていて。曲は3〜4年前、デビューするぐらいの時にあった曲で、仮歌も歌ってたんです。その時は「すごく綺麗なメロディーだな」と思っていたんですけど、去年、曲を探している時に改めて聴いた所、3〜4年前には出てこなかった想いとか、イメージが出てきて。それも今までの経験や、心の変化があってだと思うんですけど、「ため息」というイメージがすごく浮かんで。あと普段、自分が思っていたのが「やさしいね この空は 全てを見てるはずなのに…」「いつこんな泣きむしになっただろう」という歌詞で、いつも空を見ながらそう思ってたんですよ。「はぁ…」って、ため息をつくような。鹿児島から出て来て4〜5年が経って、寂しいと思う時も、「よし、また頑張ろう!」と思う時も、空を見るし。そこから段々と色々な言葉が出てきて。

――前作のアルバム「花Kagari」に入っていた「時よ」を聴いた時にも感じたんですけど、滴草さんの歌って空気感というか、微妙な息づかいや、声のザラザラした質感だったり、空気の振動が耳に伝わるのが分かるくらい繊細な印象を受けていたので、今回の「ため息」というサブタイトルはピッタリだなと思いました。

滴草:ありがとうございます。サビの部分は特に「ため息」な雰囲気がすごくあって。言葉をはめようと思ったらはめられるんですけど、敢えてそこはメロディーと声だけにしたんです。言葉が無くても伝わるんじゃないか、聴く人がその人の想いでメロディーを聴いてくれるんじゃないかなと思ったんです。