提供:週刊実話

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 米中貿易戦争の核心は両国の「5G」(第5世代移動通信システム)を巡る覇権争いだ。何しろ5G特許の「出願件数」で中国は米国を抜き、世界を一歩リードしている。あくまで「出願」で、特許が「成立」した件数でないが、それでも5G必須特許出願の企業別シェア(独:IPリッテクス社調査)は以下の通りである。

・ファーウェイ(中国)15.05%
・ノキア(フィンランド)13.92%
・サムスン(韓国)12.74%
・LG(韓国)12.34%
・ZTE(中国)11.70%
・クアルコム(米国)8.19%
・エリクソン(スウェーデン)7.93%
・インテル(米国)5.34%

 中国と韓国のの大手2社だけで世界の2分の1を占めており、日本企業は「お呼びでない」状態だが、この数字だけでは見えないものがある。

 まず中国勢の特許出願は基地局に関する技術がほとんどだ。そして前述したように「出願」が多くても、特許として認められるかは別問題だ。

 「5G技術は4G技術があって初めて成立するものです。この4Gに関する特許は圧倒的にクラルコムが保有する上、5Gは、4G特許へのロイヤリティーが派生します。ですから中国はダミー(シンガポール籍のブロードコム)を使って、クアルコムの買収に史上空前の買収金額を提示して乗っ取ろうとしたのです。が、土壇場で米国は、中国が背後にいるこの買収案件に『国家の安全保障にかかわる』として拒絶しました」(国際ジャーナリスト)

 去る5月10日、トランプ大統領は、追加関税増額措置(2000億ドル分の中国製品に25%の高関税を掛ける)と発表、続けて15日、ファーウェイへの部品供給を事実上止める「非常事態宣言」の大統領令に署名した。「中国」と名指しはしていないものの、誰が見ても中国製品の流入阻止が目的であることは明白だ。

 「同時に米商務省は『ELリスト』なるものを作成し、およそ68社をその対中禁輸リストに挙げています。このため株式市場は大混乱に陥りました。世界すべての株式市場から時価総額にして、約250兆円が蒸発したのです」(経済アナリスト)

 むろん「非常事態宣言」は米国企業をも直撃している。トランプ氏の支持基盤である米・中西部では穀物輸出の農家、穀物商社が輸出減に悲鳴を上げた。一度は米国復帰を宣言していたハーレーダビッドソンは対中輸出が難しくなるため4月23日、米・ウィスコンシン州からタイへ工場移転を決めた。

 5月初旬の株価下落率でワースト銘柄はインテル(10.7%)、化学材のデュポン(9.8%)、半導体のエヌビディア(7.8%)、アップル(6.9%)、動画配信のネットフリックス(6.2%)というような惨憺たるありさまだ。

 日本では、韓国の「徴用工」を巡る難癖に「経済制裁を」という声も上がるが、“返り血”を恐れ及び腰だ。そこへ行くと米国は向こう傷を恐れない。ここが日米の大きな違いである。